「離婚することになったので養育費を請求したいが、計算方法が分からない…」
「離婚後に養育費をもらっているけれど、金額が低い気がする。養育費ってどのように計算すればいいのだろう…」
このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
離婚して未成年の子どもを引き取ることになったら、元パートナーに養育費を請求できます。でもそれっていくらくらいもらえるのでしょう?きちんと子どもを育てていけるような金額がもらえるものなのでしょうか?
なんらかの基準で計算ができるものなら、しっかりと計算方法を知り、子どものために適正な金額を確実に獲得したいところです。
そこで今回は、
- 養育費の計算方法
- 養育費算定表の使い方
- 養育費を確実にもらうために注意すべきこと
などについて、弁護士が解説していきます。
この記事が、養育費の計算方法でお悩みの方の手助けとなれば幸いです。
なお、今すぐ養育費を計算したい方は、こちらのツールをお試しください。
簡単な時効を入力するだけで、適切な養育費の金額の計算結果がすぐに分かります。
目次
1、養育費を計算するための基本的な考え方
養育費の金額は、(元)夫婦間の話し合いで合意ができれば自由に決めることができます。
月に1万円でも100万円でも、当事者がお互いに納得しているのであれば、なんの問題もありません。
しかし、話し合ってもスムーズに合意できるケースばかりではありません。
その場合には、さまざまな要素を総合的に考慮して養育費が決められることになります。
そこでまずは、養育費を計算するための基本的な考え方を解説します。
(1)そもそも養育費とは
養育費とは、未成熟な子どもが自活できるようになるまで育てるために必要なお金のことです。
両親が婚姻中はお互いに助け合って子どもを育てていきますが、離婚後も子どもとの関係では引き続き、両親が養育費を分担して負担していくべきこととされています。
そのため、民法では両親が離婚する際には子の監護に要する費用の分担について取り決めなければならないとされています(民法第766条1項、2項)。
また、直系血族にはお互いに生活を助け合う義務がありますので(民法第877条1項)、子ども自身から父親(あるいは母親)に対して養育費を請求することもできます。
養育費をもらえるのは、基本的に子どもが20歳になるまでです。
ただし、高校を卒業して子ども自身が自活できるようになれば養育費の支払が終了することもありますし、逆に大学に進学したため自活できていない場合は大学を卒業するまで延長されることもあります。
(2)養育費の相場は4万3,707円
養育費としてどれくらいの金額がもらえるのかが気になるところだと思いますが、世間一般の平均相場としては、厚生労働省の調査結果によると月4万3,707円とされています。
参考:厚生労働省|平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果
ただし、この金額は現に養育費を受け取っている母子世帯に限っての平均値であることに注意が必要です。
現在も養育費を受け取っている母子世帯の割合は全体の24.3%に過ぎませんので、それ以外の母子世帯も含めて考えれば、実際に支払われている養育費の平均相場はごくわずかな金額ということになります。
養育費をもらえていない世帯が非常に多い上に、もらっている世帯でも適正な計算式に従って取り決めた金額ではないと考えられます。
多くのシングル世帯では、適正に計算すればもっと多くの養育費がもらえるはずです。
(3)子どもの人数が多く、年齢が高いほど養育費は高額に
適正な養育費の金額を計算するための考え方ですが、まず、子どもの人数が多いほど、また子どもの年齢が高いほど、養育費は高額となります。
子どもが幼いうちは食費や学費はお小遣いなどもさほど大きな金額は必要ありませんが、子どもが育つにつれて、これらの金額が増大していきます。
また、住まいも広いところに移る必要が出てくることもあるでしょう。
このような事情があるので、養育費を取り決めるときには子どもの人数と年齢を考慮する必要があるのです。
(4)支払う側の収入が高く、受け取る側の収入が低いほど養育費は高額に
次に、両親の収入も養育費の金額に影響してきます。
なぜなら、養育費は両親が分担して負担すべきものですので、経済力に応じて負担割合が異なってくるからです。
つまり、元パートナーの収入が高い場合には高額の養育費が期待できますが、あなたにも収入がある場合には、その分だけ受け取れる養育費の金額が減ることになります。
(5)将来の学費も考慮する必要がある
養育費を取り決めるとき、子どもがまだ幼い場合には「月3万円」などと、その時点で必要な金額で取り決めてしまうケースも多いですが、将来の学費を考慮しておくことも重要です。
中学までの学費は公立学校なら基本的に無償ですが、高校からは公立であっても費用がかかってきます。
ちなみに、子どもが高校に進学した場合にかかる学費の平均は、以下のようになっています。
- 公立高校に進学した場合:45万7,380円/年
- 私立高校に進学した場合:96万9,911円/年
(参考:https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf)
高校卒業するまでにかかる学費の総額は、公立高校で137万2,140円、私立高校で290万9,733円です。その差は約150万円あります。
大学に進学した場合、4年間にかかる学費の総額は下記の通りです。
- 国公立大学に進学した場合:748.1万円
- 私立大学文系に進学した場合:965.7万円
- 私立大学理系に進学した場合:1,070.4万円
(参考:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf)
このように、進学先によってかかる学費が大幅に異なります。
また文部科学省「子供の学習費調査」平成28年度によれば、学習塾費の年間平均額は次の通りです。
- 公立小学校:15.1万円
- 私立小学校:32.0万円
- 公立中学校:29.4万円
- 私立中学校:26.2万円
- 公立高等学校:30.2万円
- 私立高等学校:39.4万円
受験のためにかかる塾の費用も、教育費の中で大きなウェイトを占めます。
そのため養育費を計算するときは、私立や大学の入学金等の各種費用や、塾等の習い事の費用も考えた上で算出しましょう。
なお、子どもがまだ幼いうちに将来の学費を正確に計算するのは困難です。
そこで、養育費を取り決める際には、子どもの進学の時期に再度協議すべきという条項を離婚協議書や合意書に盛り込んでおくべきです。
2、養育費の具体的な計算方法
では、養育費の具体的な計算式をご紹介します。
養育費の金額は1つの計算式ですぐに割り出せるものではなく、以下の手順に従って計算していきます。一見、複雑な計算方法ですが、ご自身と元パートナーの年収が分かれば計算可能ですので、一度、手順に沿って計算してみましょう。
(1)まず両親の基礎収入を計算する
まずは、養育費の出所となる両親の基礎収入を計算します。
基礎収入とは、実際の総収入そのものではなく、そこから公租公課や職業費(仕事をするために支出が必要となる経費)、特別経費(住居費など家計において固定的にかかる経費)を控除した金額のことです。
もっとも、これらの控除額を個別に計算することは困難ですので、養育費の計算においては、統計資料に基づいて算出された標準的な割合を控除することになります。
したがって、このステップにおける計算式は以下のようになります。
親の総収入×○%=基礎収入
「○%」に入る数値は、以下の表のとおりです。
給与所得者の場合 | 事業所得者の場合 | ||
給与収入(万円) | 割合(%) | 事業収入(万円) | 割合(%) |
~100 | 42 | ~421 | 52 |
~125 | 41 | ~526 | 51 |
~150 | 40 | ~870 | 50 |
~250 | 39 | ~975 | 49 |
~500 | 38 | ~1,144 | 48 |
~700 | 37 | ~1,409 | 47 |
~800 | 36 |
|
|
~1,350 | 35 |
|
|
~2,000 | 34 |
|
|
例えば、元パートナーが給与所得者で年収600万円だとすれば、基礎収入は以下のようになります。
600万円×37%=222万円
(2)生活費指数に応じて子どもの生活費を計算する
次に、子どもにかかる生活費を計算します。
ここでも、個別のケースごとに実際の生活費を計算するのではなく、統計資料に基づいて算出された生活費指数を用いて計算していきます。
生活費指数とは、親の生活費を100として、子どもにかかる生活費の割合を算出した数値のことで、具体的な数値は以下のとおりです。
- 親:100
- 子(0歳~14歳):55
- 子(15歳以上):90
計算式は、以下のとおりです。
義務者の基礎収入×{子の生活費指数÷(義務者の生活費指数+子の生活費指数)}=子の生活費
例えば、上記のケースで0歳~14歳の子どもが1人いるとすれば、子どもの生活費は以下のようになります。
222万円×{55÷(100+55)}=78万7,742円
子どもが複数いる場合は、それぞれの子どもの生活費指数を加えていきます。
上記のケースでさらに15歳以上の子どもがもう1人いるとすれば、以下の計算となります。
222万円×{(55+90)÷(100+55+90)}=131万3,878円
(3)両親の基礎収入に応じて養育費の分担額を割り出す
以上の計算結果は、両親が負担すべき養育費の年額です。
そこで次に、両親の基礎収入に応じて分担額を割り出します。
計算式は以下のとおりです。
子の生活費×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}=義務者が負担すべき養育費
上記の子ども1人(0歳~14歳)のケースで権利者が給与所得者で年収200万円だとすれば、元パートナーに請求できる養育費は以下のようになります。
200万円×39%=78万円(権利者の基礎収入)
78万7,742円×{222万円÷(78万円+222万円)}=58万2,929円
これは1年間の養育費の金額ですので、1か月当たりの金額は12で割ります。
58万2,929円÷12=4万8,577円
このケースで1か月にもらえる養育費の適正な金額は、4万8,577円ということになります。
3、養育費算定表を使えば養育費は簡単に計算できる
裁判所では、わざわざ以上の複雑な計算をしなくても適正な養育費の目安を知ることができるように、早見表が作成され、公表されています。それが、「養育費算定表」と呼ばれるものです。
(1)養育費算定表の使い方
まずは、こちらの裁判所のページから養育費算定表を開いてください。
このページには子どもの人数と年齢に応じて異なる算定表が掲載されていますので、ご自身のケースに該当するものを開きましょう。
あなたが養育費をもらう側の立場であれば、横軸であなたの年収に該当する欄を見つけ、上に線を延ばします。
縦軸では元パートナーの年収に該当する欄を見つけ、右に線を延ばします。
この2つの線が交差したところに記載されている金額が、養育費の目安となります。
上記の、子ども1人(0歳~14歳)、義務者の年収600万円、権利者の年収200万円のケースなら、養育費の目安が「4~6万円」とされていることが分かるでしょう。
(2)養育費算定表は2019年に改訂された
養育費算定表は、家庭裁判所の調停や審判等において、適正な養育費の金額を簡易的に、かつ公平に算出することができるように、裁判官の研究によって作成されたものです。
2003年に初めて養育費算定表が公表されましたが、その後の増税や物価上昇などをはじめとする社会情勢の変化に伴い、算定表に記載の金額は実態に見合わない低いものになっているとの指摘がなされていました。
そこで、さらに裁判官による研究が重ねられ、2019年に養育費算定表の改訂版が公表されました。
改訂版では、多くのケースで1万円~2万円ほど養育費の金額が増額されています。
現在、裁判所で公表されているものは改訂版ですので、これから養育費を請求する方は、この改訂版の算定表を使用するようにしましょう。
(3)養育費算定表は絶対的なものではない
注意が必要なのは、養育費算定表に記載された金額はあくまでも目安に過ぎないということです。
絶対的なものではありませんし、法的な拘束力もありません。
したがって、特別な事情があれば、養育費算定表の金額を超える養育費を請求することが可能な場合もあります。
例えば、
- 子どもが重い病気にかかり、医療費が必要になった
- 子どもを塾に通わせることになった
- 子どもが大学や専門学校に進学することになった
というような場合、ケースバイケースではありますが、養育費を増額できる可能性もあります。
元パートナーに事情を伝えて増額を求めて、よく話し合うようにしましょう。
(4)養育費算定表を使った計算シミュレーション
それでは、養育費算定表を使って実際に養育費を計算してみましょう。
以下で、いくつかのバリエーションごとに計算シミュレーションを表にまとめましたので、ご自身のケースに近い事例を見つけて、どれくらいの養育費がもらえるかの参考にしてください。
①子ども1人のケース
子どもが1人のみの場合、子どもの年齢・両親の年収に応じて、養育費の金額は以下の表のようになります。
子どもの年齢 | 両親の年収 | 養育費の金額 |
2歳 | 義務者500万円、権利者0円 | 6~8万円 |
10歳 | 義務者450万円、権利者100万円 | 4~6万円 |
16歳 | 義務者700万円、権利者300万円 | 6~8万円 |
②子ども1人のケース
子どもが2人いる場合、子どもの年齢・両親の年収に応じて、養育費の金額は以下の表のようになります。
子どもの年齢 | 両親の年収 | 養育費の金額 |
5歳と3歳 | 義務者500万円、権利者0円 | 8~10万円 |
16歳と14歳 | 義務者450万円、権利者100万円 | 8~10万円 |
18歳と16歳 | 義務者700万円、権利者300万円 | 10~12万円 |
③子ども1人のケース
子どもが3人いる場合、子どもの年齢・両親の年収に応じて、養育費の金額は以下の表のようになります。
子どもの年齢 | 両親の年収 | 養育費の金額 |
7歳と5歳と2歳 | 義務者500万円、権利者0円 | 10~12万円 |
16歳と14歳と11歳 | 義務者450万円、権利者100万円 | 8~10万円 |
18歳と16歳と15歳 | 義務者700万円、権利者300万円 | 10~12万円 |
4、養育費計算ツールで適正な養育費の金額がすぐに分かる!
裁判所の養育費算定表は大変便利ですが、それでも面倒に感じる人もいるのではないでしょうか。
たしかに、養育費の金額を調べるために自分のケースに該当する表を探さなければなりませんし、選択を誤ると適正な金額は分からなくなります。
そんな人のために、子どもの人数・年齢、両親の年収を入力するだけですぐに適正な養育費の金額を計算できるツールをご用意しました。手軽に養育費を計算したい方は、ぜひお試しください。
5、養育費を計算したら取り決めが必要!確実にもらうためのポイント
養育費の金額を正確に計算できても、元パートナーから払ってもらえなければ意味がありません。
そこで次に、養育費を確実にもらうためのポイントをご紹介します。
(1)なるべく協議で決着をつける
実際に養育費を決める際には、養育費算定表などに頼り切るのではなく、なるべく当事者同士の話し合いで決着をつけるのが望ましいです。なぜなら、この表に記載されている養育費の金額は目安に過ぎないからです。
その金額で十分だという場合には問題ありませんが、例えば、子どもが「ピアノを習いたい」「医学部に行きたいので私立の有名校に進みたい」というような場合には、養育費が不足する可能性があります。
それでも、調停・審判や裁判をすると、家庭裁判所は養育費算定表を機械的に適用し、その範囲内で養育費の金額を決めてしまうケースがほとんどです。
十分な養育費を獲得するためには、協議において必要な金額とその理由を説明し、元パートナーの理解を得て合意をするのが得策なのです。
(2)協議が調ったら公正証書を作成する
協議によって合意ができたら、その内容を公正証書にして残しておきましょう。なぜかというと、口約束だけでは相手方が約束を必ず守るという保証がないからです。
離婚協議書や合意書を作成したとしても、それだけでは養育費が不払いとなった場合に、すぐに強制的な取り立てを行うことはできません。取り立てを行う前に、裁判をしなければならないのです。
この点、養育費の取り決めを記載した公正証書には確定判決と同じ法的効力があります。
相手方が約束どおりに養育費を支払わない場合には、裁判をしなくてもすぐに強制執行を申し立てて相手方の給料や預金口座などを差し押さえて、そこから養育費を回収することが可能になります。
なお、調停や裁判で養育費を取り決めた場合は、最終的に公的な文書となる書面が作成されますから、問題はありません。
(3)協議が調わなければ調停・裁判をする
養育費は協議で決めるのが理想的ですが、相手方と意見が食い違うケースも多々あります。
合意ができなければいつまで経っても養育費をもらうことはできませんので、協議が長引きそうになったら、調停・裁判をした方が良いでしょう。
これから離婚する人の場合は、まず家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てて、その調停の中で養育費についても話し合います。
調停ではこちらの希望が全面的に通るとは限りませんが、話し合いを仲介する調停委員のアドバイスや説得を交えて、できる限り有利な内容での合意を目指すことになります。
離婚調停でも協議がまとまらなければ、引き続き審判を求めることもできますが、一般的には「離婚訴訟」に進みます。
訴訟では、有力な証拠を提出した方が勝訴することになりますが、養育費については、やはり養育費算定表に従って金額が決められるケースがほとんどです。
なお、離婚後に新たに養育費を請求する場合は「養育費請求調停」、現在も養育費をもらっているけれど増額を請求する場合には「養育費増額請求調停」を申し立てます。
これらの場合、調停で協議がまとまらなければ、自動的に審判の手続に移行して、家庭裁判所が養育費算定表に従って養育費の金額を決めることになります。
(4)養育費の減額を請求されたときの対処法
養育費をもらう側の事情によって養育費の金額を算定表の目安よりも増額できる場合があるのと同様、支払う側の事情によっては算定表の目安よりも減額される場合もあります。
また、一度養育費の金額を取り決めても、後に事情が変化した場合には支払いストップや減額が認められることもあります。
具体的には、以下のような事情があると減額が認められやすくなります。
- 支払者が再婚し、扶養家族が増えた場合
- 支払者が無職になるなど、収入が減少した場合
- 親権者の収入が増えた場合
- 親権者が再婚した場合
とはいえ、これらの事由によって、どの程度減免されるのかはケースバイケースです。
元パートナーからこのような事情を伝えられ、これ以上養育費は支払えないと言われた場合は、すぐに弁護士等の専門家へ相談することをお勧めします。
(5)養育費が不払いになったときの対処法
先ほど、公正証書があればすぐに差押え手続きが可能ということをご説明しましたが、実際に養育費が不払いになったときはどのように対処すればよいのでしょうか。
その他の場合も含めてご説明します。
①内容証明郵便で請求
まずは、相手方に対して内証証明郵便で請求書を送付し、支払を求めます。
相手方が任意に支払いを再開してくれれば、以下の手続きは不要になります。
②調停・審判を申し立てる
協議で養育費を取り決めて公正証書にしていなかった場合、相手方が任意の支払いに応じなければ家庭裁判所に「養育費請求調停(または審判)」を申し立てる必要があります。
公的な場で改めて養育費の金額を取り決めて、支払ってもらうことになります。
③家庭裁判所に履行勧告・履行命令を求める
家庭裁判所の調停・審判や裁判で養育費を取り決めていた場合は、家庭裁判所から相手方に対して「履行勧告」や「履行命令」を発出してもらうことができます。
ただし、履行勧告や履行命令には法的な強制力はないので、それでも相手方が支払わない場合には次のステップに進みます。
④強制執行を申し立てる
強制執行とは、金銭の支払いについて「債務名義」を取得している場合に、債務者の財産を差し押さえる手続きのことです。
債務名義とは、強制的に金銭の支払いを命じる法的な効力がある公的な書面のことで、「調停調書」「審判書」「判決書」「和解調書」「公正証書」などがこれに当たります。
これらの書面を取得している場合は,裁判所に強制執行を申し立てることによって相手方の財産を差し押さえて、養育費を回収することが可能です。
差し押さえる財産としては給料や預金口座が一般的ですが、相手方が不動産や有価証券など他にも財産を有している場合は、それらの財産を差し押さえることもできます。
6、養育費だけじゃない!離婚におけるお金の話
養育費以外にも離婚時に受け取れるお金があります。子どもを育てていくためにも、受け取れるお金はしっかりと受け取るようにしましょう。
養育費のほか、離婚に関係するお金は、
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
の3つです。
(1)財産分与
財産分与とは、婚姻中に築き上げた共有財産を分けることです。
そのため、婚姻前にそれぞれが作った財産は、財産分与の対象にはなりません。
財産分与の対象となる主な資産は、下記の通りです。
- 現金
- 不動産
- 有価証券
- 家具や家電
- 退職金
これらの財産のうち、婚姻後に取得したものは、共働きもしくは専業主婦(主夫)問わず、原則夫婦で1/2ずつで分割します。
(2)慰謝料
相手方が離婚原因を作った場合には、慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料を請求できる典型的なケースは、相手方から暴力を受けた、浮気をされた、性交渉を拒否された、などの場合です。
このような場合には相手方の行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金として慰謝料を受け取ることができます。
もし、慰謝料請求できる事由が相手方にある場合、実際に請求するためには証拠が重要となります。
どのような証拠が必要なのかは事由によって異なります。
専門家に相談の上、請求に踏み切るべきでしょう。
なお、相手方に上記のような有責行為がない場合には、慰謝料は発生しないことに注意が必要です。
例えば、性格の不一致や価値観の違いという理由で離婚した場合は、法的には慰謝料は認められません。
それでも、離婚時の協議次第では「解決金」という意味合いで慰謝料を獲得できる場合もあります。
解決金を獲得するためには高度な交渉力が要求されますので、専門家に相談した方が良いでしょう。
(3)年金分割
年金分割は夫婦それぞれ支払った厚生年金保険料を分割する制度です。
将来もらえる年金ですが、今のうちに分割の手続きだけはしておかなければなりません。
離婚後2年が経過すると年金分割は請求できないことになっているからです。
この手続きをすることにより、婚姻中に支払って年金保険料を夫婦が共同で支払ったとみなされます。
共働きの場合は、夫婦が支払った保険料を足して、2で割った保険料を支払ったとします。
専業主婦の場合は、夫の支払って保険料の一部は妻が支払ったとみなして、将来の年金額を計算します。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
7、養育費の計算で困ったら弁護士相談がおすすめ
この記事では養育費の計算を中心に解決してきましたが、個別のケースで養育費の金額を適正に計算するのは意外に難しいものです。
養育費算定表や養育費計算ツールを使えば簡単に目安が分かりますが、それはあくまでも目安に過ぎません。
適正な金額の養育費を獲得するためには、弁護士に相談することが有効です。
弁護士に具体的な事情を伝えれば、適切な金額を計算してくれます。
養育費の協議がスムーズに進まない場合には、弁護士に依頼すればあなたに代わって相手方と交渉してもらえます。
調停・審判や裁判が必要となった場合にも、全面的なサポートが受けられます。
ひとりで悩まず、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
養育費の金額や支払い方法などは、離婚の際に話し合って決めることが理想的です。
しかしながら、離婚したい気持ちが先に立ってしまい、決めずに離婚してしまうことも多々あります。
また、話し合いがまとまらずに長引いてしまうことも。
養育費は離婚後、安心して暮らすために欠かせないお金だと言えます。財産分与や慰謝料のように一度もらって終わりではなく、子どもが自活できるようになるまで継続してもらい続けることも重要です。
お子様の養育に支障をきたさないよう、弁護士の力を借りて養育費の金額を正確に計算し、獲得するようにしましょう。