離婚を決断したけれど、離婚成立までにかかる時間やプロセスについて不安を抱いていませんか?離婚は複雑な過程を伴うことがあり、長期化することもあります。
そこで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、円滑な離婚の秘訣や長期化時の対策をご紹介します。
離婚を早めに成立させるヒントやスムーズな手続きについて知りたい方は、ぜひご一読ください。
1、離婚成立までの平均期間は1年以内
みなさんの中には、「話し合いがこじれて離婚成立まで何年もかかってしまった…」というような話を聞いたことがある方も多いかもしれませんが、実際の離婚にかかる時間は平均1年以内で、1年もかからず離婚が成立しているケースもたくさんあります。
(1)別居した場合も80%は1年以内に離婚が成立
厚生労働省の調査によれば、離婚までに別居期間があった場合でも、82.5%の夫婦は1年以内に離婚が成立しています。
別居してしまうと毎日顔を合わせることもなくなるので、精神的に楽になる代わりに離婚のための話し合いが進まなくなってしまうのではないか…と心配な方も少なくないでしょう。
しかし、このデータを見る限り、別居していてもほとんどの夫婦は1年以内に離婚することができているので、「1日でも早く別々に暮らしたい」という場合は、離婚の話し合い期間を別居しながら過ごすのも選択のひとつです。
(2)ただし協議離婚なら即日の離婚成立も可能
そもそも離婚とは、夫婦の合意があれば即日でも成立させることができるものです。
そのような夫婦の話し合いによる離婚を「協議離婚」と呼び、手続きに必要な以下のアイテムさえ用意できれば、その日のうちにすぐ離婚することができます。
- 離婚届
- 戸籍謄本(本籍地以外の市役所で手続きを行う場合)
- 本人確認ができる身分証(免許証・パスポートなど)
つまり、最短期間で離婚を成立させたい場合は、協議離婚で相手が納得できるように話し合いを進め、離婚の合意を取り付けることが重要なポイントになるでしょう。
2、離婚成立までの期間が1年以上かかるケース
それでも中には、離婚成立までの期間が平均の1年を上回ってしまうようなケースもあります。
具体的な例をピックアップしてみましたので、ぜひ目安のひとつにしてください。
(1)相手が離婚に合意してくれない
離婚の話が相手にとって寝耳に水であった場合など、相手が「絶対に離婚しない!」と頑なな態度を見せているケースでは、やっぱり離婚を成立させるまでにそれなりの期間がかかります。
相手が納得できるまで何度も話し合いを重ね、ときには冷却期間を置くことも必要です。
(2)財産分与や慰謝料などの話がまとまらない
離婚そのものには同意してくれている場合でも、離婚に伴って発生する金銭のやり取りでお互いの希望が食い違うことがあります。
財産分与は基本的に、離婚の原因がどちらにあろうと関係なく、結婚生活で築いた財産をその貢献度に応じて2人で分けるものなので、たとえ自分に非がある離婚でも請求する権利はあります。
一方、慰謝料は離婚の原因が相手にあった場合に、自分が受けた精神的な苦痛に対して支払いを要求するものです。
慰謝料を請求する際には、大体の相場もチェックした上で相手と話し合いを行ったほうがよりスムーズでしょう。
(3)子供がいる|親権・面会交流・養育費など
子供がいる場合は、親権をどちらが持つのか、親権を持たないほうは子供と定期的に面会するのか、するとしたらそのペースは?面会場所は?などなど、夫婦だけのケースに比べて離婚の際に決めておかなければならない項目がグッと増えます。
親権を持たないほうの親には養育費を支払う義務も発生するので、その金額をいくらにするかでも話が揉めやすいでしょう。
特に養育費は、一旦金額に同意が得られても、離婚後支払いが滞ってしまうケースが大半を占めます。
親権を持ったほうの親が再婚し、その再婚相手に子供を養う十分な経済力がある場合など、実質的に養育費を受け取らなくても生活に困らないケースは別として、養育費は子供の生活レベルを保つ上でも大切なものなので、慎重に取り決めましょう。
そして内容に同意が得られたら、公正証書に残しておくのがおすすめです。
公正証書は裁判での判決と同程度の強い執行力を持つ文書で、その書面に記載されている養育費の支払い義務が果たされていない場合は、財産を差し押さえるなどの強制執行を行うこともできます。
作成には、養育費の金額に応じた数千円~数万円の手数料がかかりますが、1度作成すれば公証役場に20年間保管され、証拠能力も高いので安心です。
(4)離婚調停や離婚裁判へと発展した場合
どれだけ話し合いを重ねても相手が離婚に合意してくれない場合や、財産分与・養育費などの細かい取り決めが一向にまとまらない場合には、調停委員を間に挟んで話し合いを行う「離婚調停」に進むこともできます。
離婚調停では調停委員が状況を整理しながら、円満に離婚するための手助けをしてくれますが、1回の調停で話が決着するケースは少なく、2回、3回と回数を重ねればそれだけ期間も長引きます。
また、調停が不成立になればその次は離婚裁判という道もありますが、訴訟から離婚が成立するまでにはさらに1~2年の期間が必要です。
それでもたとえば相手の不貞行為やDV・モラハラなど、法的な離婚事由に該当する事実がある場合は自分に有利な判決が出る可能性も高くなるので、思い切って裁判を起こすメリットも大きいでしょう。
協議離婚の次のステップ、離婚調停に進んだ場合、実際にはどれくらいの期間や回数がかかるものなのでしょうか。
司法統計のデータによると、実施された調停の回数で最も多いのは「2回」の22.4%。
次に「3回」の19.5%が続いていますが、全体の13.3%は「6-10回」、中には「21回以上」に及んでいるケースもあるため、そうなってくるとかなり調停期間も長引くことが考えられます。
実際、審理期間のデータでは「6ヶ月以内」が最も多く35.8%、次に多いのが「3ヶ月以内」の30.8%、3番手の「1年以内」も22%を占め、最低でも3ヶ月~1年は覚悟しておいたほうが良いことが分かります。
3、現実的に夫婦の話し合いで離婚成立は可能?
ここで気になるのが、「一体どれくらいの夫婦が離婚調停や裁判まで進むものなんだろう?」という疑問ですが、実は離婚全体の約9割は協議離婚です。
つまり、ほとんどの場合は夫婦の話し合いのみで離婚が成立しています。
ただ、この割合は全年代トータルの平均で、年代別に細かくデータをチェックしていくと、年齢が上がるに従ってじわじわと裁判離婚の割合が増えてくるという特徴もあります。
厚生労働省の調査によれば、夫と妻が20代の場合にはそれぞれ10%程度だった裁判離婚が、妻が60代以上、夫が70代以上になると大体15%前後までアップしており、微々たる差ではありますが確かな傾向として捉えることができるでしょう。
4、1日でも早く離婚を成立させるコツ
最後に、少しでもスムーズに離婚を成立させるために、心がけておきたいポイントをまとめてご紹介します。
(1)離婚後の生活を踏まえて基盤を整えておく
離婚はゴールではなく、離婚後どのようにして新しい生活を送っていくかが最も重要なポイントです。
自分と子供が食べていくだけのお金を稼げる仕事があるのか、仕事中に子供を見てくれる人がいるのかなど、具体的にイメージして考えておきましょう。
調停や裁判に進む場合、弁護士費用をどこから捻出するのか、調停・裁判の日に仕事を休むことは可能なのか、当日子供をどこに預けるのかなどもあわせて考えておく必要があります。
離婚が成立するまで別居したいけど、その間の生活費をどう工面するかで頭を悩ませているみなさんは、婚姻費用の分担請求を行うことで問題を一定程度解決することができます。
たとえ別居していても、夫婦にはお互いの生活を支え合う義務があり、離婚成立までの婚姻費用=生活費を夫に請求することができるのです。
これには離婚調停とはまた別の調停を起こす必要があり、支払い義務は基本的には調停の申立を行った月から発生するので、別居状態に入ったらなるべくすぐに手続きを行うようにしましょう。
(2)話し合うべき内容をまとめておく
離婚を切り出した際に、話し合うべき主なポイントは次の通りです。
- 離婚の同意が得られるか
- 財産分与や慰謝料について
- (子供がいる場合)親権と養育費について
これらのポイントについて、あらかじめ自分の中で譲れる項目と譲れない項目をはっきりさせ、お金が絡むことについては金額の目星をつけておくことで、よりスムーズに話し合いを進めていくことができます。
よくある慰謝料の相場もケース別にまとめてみましたので、請求を検討しているみなさんはぜひ参考にしてください。
- 浮気・不倫:100~300万円
- DV・モラハラ:50~300万円
- 悪意の遺棄(生活費を渡さないなど):50~200万円
(3)相手が離婚に納得できる条件を引き出す
相手に離婚に同意してもらうためには、相手にとってもそれなりにメリットのある条件を提示することが必要不可欠です。
たとえば離婚そのものに同意してもらう代わりに、財産分与や慰謝料の金額などについては相手の要求に沿うようにするなど、なるべく速やかに相手が納得できる条件を引き出しましょう。
大切なのは、相手が離婚を拒否する理由を知ることです。
離婚をしても相手が守りたいものは比較的守れるのだ、と言うことをアピールして行きましょう。
(4)弁護士など離婚のプロに相談してみる
もしみなさんの配偶者が、離婚したいと伝えても聞く耳を持ってくれなさそうな場合や、事前に話し合いが難航しそうなことが分かっている場合は、どのように話を進めるのが効果的なのかをプロに相談しておくのもひとつの方法です。
離婚の意思と同時にすでに弁護士に相談していることを配偶者に伝えることで、こちらの本気度を見せることができますし、ある程度のプレッシャーを与えることもできます。
弁護士によっては無料相談会を実施していることもありますので、まずはそういった機会を活用してみるのも良いでしょう。
(5)話が平行線になった場合は第三者を介入させる
夫婦2人でじっくり話し合うのが基本の協議離婚ですが、お互いに譲れない思いがある場合には、話が平行線のまま一向に進まないこともあります。
当事者同士だけの話し合いでは、つい意地を張ってしまって話がこじれてしまうこともあります。
そのようなときには、家族や友人などの第三者に同席してもらうのがおすすめです。
その際、たとえば第三者が相手の母親のみだった場合、どうしても相手に肩入れして平等な話し合いができない可能性もあるので、できれば自分と相手がそれぞれ1人ずつ第三者に声をかけ、合計4人で話し合いましょう。
もしくは、自分や相手とはまったく関係のない、中立的な立場で話を聞いてくれるカウンセラーなどの専門家に同席してもらうことができればより理想的です。
まとめ
離婚成立までの平均期間はおよそ1年以内で、離婚までの間に別居期間があった夫婦でも、約8割は1年以内に離婚が成立していることが分かりました。
相手が離婚に同意しない、財産分与や慰謝料・子供の親権や養育費のことなどで話が揉めた場合には、調停離婚・裁判離婚へと発展するケースもあり、その際は離婚までに1年以上の期間がかかってしまうこともあります。
特に調停は大体1ヶ月に1回ペースで開催されることが多いですが、1回で決着がつくことはまれで、2回や3回、中には6~10回ほど足を運ぶ人も少なくありません。
そうなると調停自体に数ヶ月~1年ほどの期間を要しますし、調停が不成立で裁判に進んだ場合、さらに判決が出るまでに1~2年かかります。
なるべくスムーズに離婚を成立させるためにも、こういった調停や裁判に発展させることはなるべく避け、夫婦の話し合いによる協議離婚で合意に至るよう話を進めていきましょう。
今回ご紹介したポイントも参考に、ぜひ1日でも早く離婚を成立させて、新たな人生の一歩を踏み出してみてください。