親権がいつまで続くのか、未成年の子供を抱えて離婚を考えている方々にとって、気になる疑問でしょう。
特に父親の場合、親権争いが難しいと言われていますが、子供が15歳に達すれば、自身で親権者を選択できるため、親権争いや養育費に関する準備を進めながら離婚プロセスを進めることも可能です。
この記事では、
・親権の期間はいつまでか
・養育費の支払い義務はいつまであるか
・親権者を決定するプロセスはどのように進行するか
などについて、わかりやすく弁護士が解説しています。また、親権争いで不利な立場にいる方々が知っておくべき事項についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1、親権はいつまで続くのか~そもそも親権とは?
親権とは、未成年の子どもの養育や監護をするために、親に認められた権利です。
未成熟な子どもを成長するまでサポートするための権利であり、子どもの財産の管理や法的手続きをする代理権である「財産管理権」と、子どもの生活を世話して養育する権利である「身上監護権」から構成されています。
両親が結婚している間は、子どもの親権は両親が共同で持ちます。
しかし、離婚をすれば両親の一方しか親権者になれないことが法律で定められています。(民法第819条)
そのため、離婚時にどちらかが親権を持つのか決めなければなりません。
海外では離婚後も共同親権が認められていますが、日本では現在のところ認められていないこともあり、離婚時に夫婦間で意見が対立し、親権者争いに発展することが珍しくありません。
親権についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
2、子どもの親権はいつまで?20歳?18歳?
民法では、「成年に達しない子は、父母の親権に服する」と定められています(同法第818条)。
つまり、離婚後の子どもの親権は子どもが成年に達するまで続くことになります。
では、成年とは何歳のことを指すのでしょうか?
以前までは法律で20歳を成年とすると定められていた(民法第4条)ので、一般的にも成年というと「新成人」の20歳を考える方が多いでしょう。
しかし、2022年4月1日から改正民法が施行され、成年年齢が18歳に引き下げられました。
法律上の成年年齢が18歳に引き下げられたため、これに伴い子どもの親権も18歳までに変更されています。
つまり、18歳になれば親権がなくなるため、離婚時の親権者争いもなくなります。もちろん、子どもが自分自身で一緒に住む親を決めることも可能です。
成人年齢の引き下げに関する詳しい内容については、こちらの記事をご確認ください。
3、18歳以降も養育義務は続くことがある
離婚時に親権を持たない方の親は、養育費の支払い義務を負います。
この点、子どもの親権が18歳までということになれば、養育費も18歳までしか支払う必要はないと考えてしまう方も多いでしょう。
しかし、養育費の支払い義務と親権の終期は異なるため、注意が必要です。
では、養育費の支払い義務はいつまで続くのでしょうか?
(1)養育費とは
そもそも養育費とは、未成熟な子どもが自活できるようになるまで養育や監護をするために必要な費用を指します。
子どもが成長して自立するまでには、生活するための費用や学費などさまざまな費用が発生します。
親権を持たない方の親を非監護親と呼びますが、非監護親には子どもを監護するための費用を分担する義務が法律上で課されています。(民法第766条)
この義務に基づき、離婚した後も自身と同じくらいの生活水準を子どもに提供できるような金額を支払う必要があります。
また、法律では直系血族と兄弟姉妹は扶養義務を負うことが定められており、子どもは直系血族に該当するため親は子どもを扶養する義務が生じます。(民法第877条)
その扶養義務は離婚しても消滅するものではありません。
離婚をしても法律上の親子関係であることに変わりはなく、扶養義務は継続します。
養育費についてさらに詳しい内容については、こちらの記事を参考にしてください。
(2)子どもが18歳を過ぎても養育費の支払い義務が続くケース
成年年齢が18歳に引き下げられたとはいえ、現在の社会状況では18歳を過ぎても自活することが難しい子どもも少なくありません。そのため、養育費の支払い義務が18歳を過ぎても続くケースもあります。
養育費の支払い義務が何歳まで続くのかは、子どもの進路によっても変わってきます。
高校を卒業して就職するのであれば、経済的に自立するため18歳で親の扶養義務は必要なくなると考えられます。
しかし、高校を卒業した後に大学へ進むのであれば、大学を卒業する22歳の3月までは学生なので扶養義務が生じる可能性が高いといえます。
なお、養育費の金額や支払い条件は母親と父親が話し合って決めることが原則的です。中には、両親の合意によって子どもが結婚するまで養育費を支払い続けているようなケースもあります。
養育費の支払いの年齢に関する詳しい内容については、こちらの記事も参考にしてください。
4、離婚時に親権者を決める方法
離婚時には、母親と父親のどちらが親権を持つのか決めることになります。
慰謝料や財産分与などの離婚条件は離婚後に決めるようなこともありますが、親権に関しては離婚後の共同親権が認められていないため、離婚時に決めなければなりません。
では、親権者はどのようにして決められるのでしょうか?
親権者を決める一般的な流れをご紹介します。
(1)まずは夫婦で話し合う
親権は、離婚時に夫婦が話し合って決めるのが原則です(民法第819条1項)。
お互いが合意すればどちらでも自由に決めることが可能ですが、子どもの健全な成長のためにどちらが養育するのが望ましいかという観点から冷静に話し合って決めることが大切です。
子どもがまだ小さい場合には両親の話し合いだけで親権者を決めることになりますが、ある程度年齢を重ねている場合には子どもの意見も聞いた上で話し合った方がよいでしょう。
離婚時の話し合いをスムーズに進めるためのポイントについては、こちらの記事をご確認ください。
(2)離婚調停を申し立てる
どちらの親も親権を持ちたいと考えていれば、話し合いでの解決は難しいでしょう。
話し合いで親権者が決まらない場合には、家庭裁判所が親権者を定めることになります(民法第819条2項)。
具体的な手続きとしては、離婚訴訟を起こす前に離婚調停を申し立てることが必要です(調停前置主義)。
調停とは、家庭裁判所を介して離婚に関する話し合いを行うための手続きです。離婚調停の中で、親権者の指定についても話し合いをします。
調停を申し立てれば裁判所により調停委員が選任され、調停委員を介して話し合いを行います。
調停委員は両者から個別に意見を聞いた上で話し合いを進めてくれるため、当事者だけで話し合うよりも合意による解決を図りやすくなります。
調停における話し合いを有利に進めるために最も重要なポイントは、調停委員を味方に付けることです。これまでの養育状況や子どもに注いでいる愛情、今後の養育環境の整備状況などを調停委員に対して具体的に説明し、共感を得ることが重要です。
そうすれば、調停委員が相手方に対して説得を試みてくれることもあります。
調停委員を介した話し合いの結果、合意に至れば調停成立となり、親権者争いを含む離婚問題は解決となります。
調停における親権獲得に関するポイントについてさらに詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
(3)離婚訴訟を提起する
調停でも親権者が決まらない場合は、訴訟で親権を争うことになります。
家庭裁判所に離婚訴訟を申立てますが、訴訟は調停とは異なり、話し合いを行う手続きではありません。
当事者双方が主張や証拠を提出し合い、裁判所がそれらを精査した上で、最終的に判決により親権者を定めます。
そのため、自分が親権者としてふさわしいことを証明できる証拠を提出することが非常に重要となります。
なお、訴訟にまで至れば離婚成立までに時間がかかってしまうことや、不安定な状態に置かれる子どもへの精神的な負担が大きくなるおそれがあることも知っておくべきでしょう。
訴訟で親権を獲得するためのポイントについて詳しくは、こちらの記事も併せてご覧ください。
5、親権者争いで不利な方がとるべき戦略
親権を持ちたいと考えていても、とくに父親は不利になってしまうことが多いものです。
なぜならば、子どもが幼いほど母親との心理的結びつきが強いため、母親が養育することが望ましいという「母性優先の原則」の考え方が重視されているからです。
しかし、親権者争いで不利になっているからといっても、必ずしも親権が獲得できないわけではありません。
親権者争いで不利になっている場合や、離婚時に親権を失ってしまった場合でも、次の方法で親権を獲得できる可能性があります。
(1)養育実績を重ねることが最も重要
裁判で親権者を決める際に最重要視されることは「どちらが親権者になった方が子どもは安心して暮らせるのか」という点です。
その一環として重視されているのが母性優先の原則ですが、それに加えてもう一つ、「継続性の原則」というものも重視されています。
継続性の原則とは、子どもの養育環境はできる限り変更しない方が望ましいという考え方のことです。
これまでどちらが主に子育てに関わってきたのか、そして今後も子どもの生活環境を安定的に継続させられるのかという点を裁判所は重視します。
母親と比べると父親は子どもと一緒に過ごす時間は短いかもしれませんが、子どもと真剣に向き合って愛情を注いてきたことを主張できれば父親も親権を獲得できる可能性が出てきます。
そのため、仕事をしている日中は子どもと過ごせないとしても、帰宅後や休日には子どものことを第一に考えて子育てに関わることが大切だといえます。
父親が親権を獲得するためのポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。
(2)15歳以上の子どもは自分で親権者を選べる
子どもが未成年者であったとしても、15歳以上であれば子どもが自分の意思で親権者を選ぶことができます。
調停や訴訟になった場合は、裁判所が子ども本人に意思確認を行います。
15歳以上の子どもが自由な意思で親権者を選択したと認められる場合には、基本的にその選択に従って親権者が指定されます。
そのため、父親であっても、子どもの意思で選んでもらえる場合には親権を獲得できる可能性があるのです。
子どもが15歳直前の場合には、子どもが15歳になるのを待ってから子どもの意思を尊重して親権者を決めるという方法を選んでもよいかもしれません。
(3)親権者は変更も可能
離婚時に親権者を決めたとしても、親権者を変更することは可能です。
民法第819条6項には、「子の利益のために必要があると認められるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる」と定められています。
つまり、親権者が死亡した場合や、親権者の生活悪化、育児放棄など子どもの利益を考えた場合に親権者を変更すべきだと考えられるような事情の変更があれば、親権者変更が可能になるということです。ただし、実際に親権者の変更が認められるような事情の変更はハードルが高いので、弁護士への相談は必ず行いましょう。
親権者変更をするには、家庭裁判所に「親権者変更調停」を申立てます。
そうすると、家庭裁判所の調査官による調査が行われた後に調停において親権者の変更について話し合いが行われます。
ここで合意すれば調停成立になりますが、不成立になった場合は審判が行われることになり、審判で認められれば親権者が変更になります。
親権者の変更により親権を獲得するためのポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。
親権いつまでに関するQ&A
Q1.親権はいつまで続くのか~そもそも親権とは?
親権とは、未成年の子どもの養育や監護をするために、親に認められた権利です。
未成熟な子どもを成長するまでサポートするための権利であり、子どもの財産の管理や法的手続きをする代理権である「財産管理権」と、子どもの生活を世話して養育する権利である「身上監護権」から構成されています。
Q2.子どもの親権はいつまで?20歳?18歳?
以前までは法律で20歳を成年とすると定められていた(民法第4条)ので、一般的にも成年というと「新成人」の20歳を考える方が多いでしょう。
しかし、2022年4月1日から改正民法が施行され、成年年齢が18歳に引き下げられました。
Q3.離婚時に親権者を決める方法とは?
- まずは夫婦で話し合う
- 離婚調停を申し立てる
- 離婚訴訟を提起する
まとめ
現在の民法では、子どもの親権は18歳までです。それ以降は、法律上の親権者争いは問題となりません。
離婚時に親権を獲得できなかった場合でも、いずれは親権を獲得したいと考えるのであれば、しっかりと養育費を支払い続けることや、面会交流で子どもとの絆を深めていくことが大切です。
そうすれば、15歳になった時に子どもの意思で親権者として選んでくれる可能性もあります。
しかし、まだ子どもが幼い場合は15歳まで待てないと考えてしまうでしょう。
親権争いにご自身だけで対応することは簡単ではありません。まずは専門家である弁護士に相談してみてください。親権を含めた離婚条件で少しでも有利になるようにサポートを受けられます。