専業主婦の方が離婚する際には、さまざまな不安があることでしょう。離婚後の生活費や子育て、再就職など、多くの課題が待ち受けています。
特に大きな問題はお金のことです。専業主婦として過ごしてきた方も、離婚後は基本的には仕事をする必要がありますが、自分で全ての経済を支えなければならないわけではありません。夫からの支援や公的機関からの助成金など、離婚時に請求できるお金もあります。
そこで、ベリーベスト法律事務所の弁護士が、専業主婦が離婚後の仕事や経済的なサポートについて分かりやすく解説します。専業主婦の方々の不安を軽減し、新たなスタートに向けて具体的なアドバイスをお届けします。
専業主婦ならではの離婚後の生活費の不安を抱える方にとって、この記事が心強いサポートとなることを願っています。
目次
1、専業主婦が離婚するなら仕事を始めるのが基本
専業主婦の方も、離婚後はあなたが「世帯主」となります。もう夫からもらえる収入はありませんので、生活のために仕事を始めることが基本です。
とはいえ、長い間仕事をしていなかったので就職できるかが不安であったり、子育てなどの事情でフルタイムの仕事は厳しい……ということもあるでしょう。
そこで、どのような働き方をすればよいのかについて解説していきます。
(1)正社員で働かなければならない?
離婚した後は、元夫の扶養に入ることができません。となると、税金や社会保険などの公的支払いを自身で行っていく必要があります。
また、現在の住まいを出なければならない場合は、住まいを確保するためにも働くことは必要となってくるでしょう。そのため、基本的には正社員として働くことができれば経済的には安心ということが言えます。
しかし、必ずしもそうしなければならないわけではありません。
仕事をするにしても、さまざまな働き方があります。雇われて働くとしてもパートから派遣社員、正社員まで幅が広いですし、自営やフリーランスとして働くという選択肢もあります。
仕事をどの程度やっていかなければならないのかは、次の要素によっても異なってくるでしょう。
- 離婚直後の資産がどの程度あるか
- 離婚後の生活費がどの程度必要か
このあたりの問題については、後ほど「2」および「3」で詳しくご説明します。
(2)年齢によっても変わってくる
離婚後にどの程度働くべきかは、離婚時の年齢によっても変わってきます。
①around30専業主婦の離婚
30歳前後の専業主婦の方は、どんなに離婚直後の資産が多くても、人生まだまだこれからです。
子どもが小さい場合はすぐに正社員にはなれないかもしれませんが、基本的には先のことを考え、いずれは正社員になるなどして、安定的に収入を得られる道を探すのが一般的といえます。
②around40専業主婦の離婚
40歳前後の専業主婦の方も、まだ人生の先は長いです。子どもがある程度大きくなっている場合は、正社員としての働き口を探すのが一般的です。
年齢的に正社員としての就職が厳しくなってくるかもしれませんが、過去にやってきた仕事歴がある場合はその経験を生かし、もう一度社会で活躍することを目指すとよいでしょう。
③around50以上専業主婦の離婚
50歳前後、あるいはそれ以上の年代の方は、専業主婦歴が長くなっていることでしょう。そのため、これから社会に出て仕事といっても難しいかもしれません。
年齢的な問題もさることながら、家事労働と会社での労働は根本的に質が異なります。
専業主婦の仕事は自分のペースや考えで進めることができますが、社会における仕事は、相手(上司、取引先、顧客等)の考えに従い仕事を進めることが基本です。過去の経験があったとしても、ブランクが長い場合は社会で働こうと思っても苦労してしまう可能性があります。
とはいえ、今の時代、本当にさまざまな仕事が存在します。できることはたくさんあるはずですから、ストレスなくできる仕事を探し、生活を一新されることをお勧めします。その上で、離婚の際には夫からなるべく多くのお金を獲得して離婚直後の資産を増やし、その後の生活費を極力節約して生活をするとよいでしょう。
2、専業主婦の離婚で離婚直後の資産はどうなる?無一文での離婚はあり得ない
離婚する際には、離婚原因にかかわらず財産分与を請求できます。したがって、無一文の家庭でない限り、無一文で離婚しなければならないということはあり得ません。
また、場合によっては夫から慰謝料をもらえることもあります。専業主婦の方が離婚する場合は特に、財産分与と慰謝料を適切に請求することが重要です。これらのお金をどれくらいもらうことができるかによって、離婚直後にどの程度働く必要があるのかが決まってくるでしょう。
(1)財産分与
財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産(夫婦共有財産)を離婚時に分け合うことです。結婚後に増えた財産のうち、原則として2分の1を受け取ることができます。夫名義の財産であっても、贈与や相続で取得したものでない限り、婚姻中に取得した財産は基本的に夫婦共有財産となります。
一定の財産がある夫婦の場合は、財産分与によって当面の生活を確保することができるでしょう。資産家の夫婦の場合は多くの財産を獲得できる可能性が高いので、ほとんど働く必要がないということもあるかもしれません。ただし、めぼしい財産がない夫婦の場合は、他の方法を検討する必要があります。
(2)慰謝料
夫に離婚についての有責行為があった場合には、離婚する際に慰謝料をもらうことができます。有責行為とは、法定離婚原因として民法第770条1項に定められた以下の事由などに該当する行為のことです。
夫が不倫や浮気をした場合は「不貞行為」に該当する可能性が高く、DVやモラハラの場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
もらえる慰謝料の金額はケースバイケースですが、不貞行為の場合は100万円~300万円程度が相場です。
ただし、夫婦間の話し合いで合意ができれば、相場にかかわらず金額を自由に決めることができます。すぐに離婚調停や離婚裁判をするよりも、まずは夫と粘り強く交渉してみるとよいでしょう。
3、専業主婦の離婚後の生活費はどれくらい?離婚後の生活費のサポートシステムとは
では、専業主婦の方が離婚した後には、どれくらいの生活費が必要となるのでしょうか。
お住まいの地域や子どもの有無と人数・年齢、ライフスタイルなどによって異なりますが、都内在住者の平均的な金額は概ね以下のようになると考えられます。
| 女性の一人暮らし | 子どもが1人(7歳)いる場合 | 子どもが2人(10歳と7歳)いる場合 |
家賃 | 8万円 | 9万円 | 10万円 |
食費 | 2万5,000円 | 2万8,000円 | 3万円 |
水道光熱費 | 1万3,000円 | 1万4,000円 | 1万5,000円 |
通信費 | 1万円 | 1万2,500円 | 1万5,000円 |
日用品費 | 2,500円 | 2,800円 | 3,000円 |
子どもの小遣い | 0円 | 2,500円 | 5,000円 |
学校の給食費 | 0円 | 4,000円 | 8,000円 |
被服費 | 3,000円 | 4,000円 | 5,000円 |
美容院代・化粧品代など | 3,000円 | 4,000円 | 5,000円 |
娯楽費 | 5,000円 | 7,500円 | 1万円 |
生命保険料 | 3,000円 | 3,000円 | 3,000円 |
教育費 | 0円 | 5,000円 | 1万円 |
交通費 | 3,000円 | 4,000円 | 5,000円 |
交際費 | 3,000円 | 4,000円 | 5,000円 |
合計 | 15万0,500円 | 18万5,300円 | 21万9,000円 |
子連れで離婚をする場合は、自分一人の生活費だけでなく、子育てに相当のお金が必要となります。そのために多くの収入を得なければならないにもかかわらず、子どもを放って働くわけにはいきません。実家や自治体等のサポートを受けるにしても、短い子育て期間を仕事で失ってしまうことに躊躇する女性は少なくないでしょう。
そんなときに思い出して欲しいのが「養育費制度」です。子連れで離婚をした場合、一人で育てなければならないと思われがちですが、養育費の制度があります。
また、熟年離婚でたくさん働くことはできない場合も、最低限のサポートシステムは整っています。年金分割といいます。
以下で、それぞれについてみていきましょう。
(1)養育費(婚姻費用)
離婚してあなたが未成年の子どもを引き取る場合は、相手方に対して養育費を請求できます。
養育費の金額は、基本的に裁判所の「養育費算定表」を参考にして決めます。相手方が会社員で年収600万円だとすると、養育費算定表によれば養育費の金額は子ども1人(7歳)の場合で8万円程度、子ども2人(10歳と7歳)の場合で10万~12万円とされています。
離婚前に別居をする場合は、離婚が成立するまでの間、相手方から生活費をもらうことができます。この生活費のことを「婚姻費用」といいます。
別居して離婚協議を進めている場合でも婚姻費用分担請求はできますので、忘れずに請求するようにしましょう。
婚姻費用の金額は、基本的に裁判所の「婚姻費用算定表」を参考にして決めます。相手方が会社員で年収600万円だとすると、婚姻費用算定表によれば婚姻費用の金額は子ども1人(7歳)の場合で12万~14万円、子ども2人(10歳と7歳)の場合で14万~16万円とされています。
また、離婚してシングルマザーになった場合には、さまざまな助成金を受け取ることができます。
助成金の種類や受給資格、受給条件などは自治体によって異なるものもありますが、目安として、子どもが2人(10歳と7歳)いる場合には以下の金額を受け取れると考えられます。
- 児童手当:2万円
- 児童扶養手当:5万3,350円
- 児童育成手当:2万7,000円
- 母子家庭等の住宅手当:1万円
養育費・婚姻費用・助成金としてもらえる金額をまとめると、以下のようになります。
なお、養育費および婚姻費用については、裁判所の算定表の金額に幅がありますが、間をとった金額を掲載しています。
【離婚前の別居中】
| 子どもが1人(7歳)いる場合 | 子どもが2人(10歳と7歳)いる場合 |
婚姻費用 | 13万円 | 15万円 |
助成金 | 7万6,660円 | 11万0,350円 |
合計 | 20万6,660円 | 26万0,350円 |
【離婚後】
| 子どもが1人(7歳)いる場合 | 子どもが2人(10歳と7歳)いる場合 |
婚姻費用 | 7万5,000円 | 11万円 |
助成金 | 7万6,660円 | 11万0,350円 |
合計 | 15万1,660円 | 22万0,350円 |
こうしてみると、養育費・婚姻費用・助成金である程度は生活費を賄えることがお分かりいただけるでしょう。財産分与や慰謝料としてもらったお金を少しずつ使えば、当面の間は働かなくても生活できる方も少なくないはずです。
とはいえ、ときにはあなたや子どもが病気や怪我をして医療費がかかることもあるでしょうし、家電品の購入や冠婚葬祭などで出費することもあるでしょう。子どもの将来の学費も貯めていく必要があると思います。
そう考えると、やはりパートをするなどして月に5万~6万円程度は収入を得ていく方が安心できるでしょう。
元夫が途中で養育費を支払わなくなるケースも多いので、自力で少しでも収入を得ておくに越したことはないといえます。
(2)年金分割
年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度です。婚姻期間が長いほど分割される部分が多くなりますので、熟年離婚した場合には特に離婚後の生活に大きく影響してきます。離婚原因にかかわらず請求できる制度であり、専業主婦でも請求できますので、忘れずに請求しましょう。
ただし、年金が分割されるのは厚生年金の部分だけです。そのため、相手方が受給する年金額の半分がもらえるわけではないことにご注意ください。相手方が自営業者などの個人事業主の場合は、年金分割を請求することはできません。
また、相手方が年金受給開始年齢に達しても、あなたが年金受給開始年齢に達するまでは分割された年金を受け取ることはできないことにご注意ください。現在のところ、年金受給開始年齢は原則として65歳、繰り上げ受給する場合は60歳からです。したがって、60歳以上の方であれば離婚後すぐに年金分割で生活費を確保することも可能ですが、若い方の場合は他の方法で生活費を確保しなければなりません。
(3)働くことができない場合は生活保護も
多くの方は、離婚後にまったく働くことができなければ、生活費が不足してしまうことでしょう。どうしても働くことができない場合は、生活保護の受給を検討してみましょう。
生活保護は、憲法で保障された国民の健康で文化的な最低限度の生活を実現するために設けられた制度です。生活保護を受給することは国民の権利ですので、困ったときは借金などに頼らず、生活保護を受けた方がよいといえます。働けるようになったら打ち切ることもできますので、一時的に生活保護を利用することも可能です。
生活保護を受給するには、お住まいの地域にある福祉事務所に申し出ます。万が一、申請を断られた場合は弁護士にご相談ください。
4、専業主婦が離婚をすればこれまでと同じではいられない
これまでにご説明してきたとおり、専業主婦の方でも無一文で離婚をしなければならなかったり、離婚後に必ずしも身を粉にして稼がなければならないわけではありません。
しかし、莫大な財産分与を受けられるというようなごく一部のケースを除き、これまでと同じというわけにはいかないでしょう。
今までの「夫婦の助け合い」がなくなり一人になりますので、何においても全ての責任が自分に降りかかってきます。そのため、専業主婦の方の中には、離婚したくても躊躇してしまう方が多いのではないでしょうか。「生活の安定」と「精神の安定」を秤にかけ、夫とは別れたいけれど一人で生活していく自信はない、と悩んでしまうのでしょう。
5、離婚以外で専業主婦がストレスを軽減できる3つの方法
夫との不仲に悩む専業主婦の方がストレスを軽減できる方法は、離婚だけではありません。以下の方法で婚姻関係を継続したまま、夫との距離を置くことで婚姻生活のストレスを大幅に軽減できる可能性があります。
実際に、これらの生き方を選択している夫婦も数多くいます。ただ、本当の幸せと言えるかは人それぞれですのでご注意ください。
(1)卒婚
卒婚とは、離婚はせず戸籍上は夫婦のまま、お互いに干渉せず自由に生活するという夫婦のあり方です。
別居するケースもあれば、同居したままお互いに干渉しないケース、週末だけ別居するケース、逆に週末だけ同居するケース等々、さまざまなパターンがあります。お互いに自由になり、婚姻生活の軋轢から解放されることで精神的な余裕ができ、今までよりも良好な夫婦関係を築きやすいというメリットがあります。
ただ、冷え切った夫婦の場合はそのまま心も離れていき、離婚につながりやすいというデメリットもあります。
その場合には、専業主婦の方は離婚後の生活が不安になることでしょう。
(2)別居(家庭内別居)
夫と一緒に生活することはできないけれど、離婚は躊躇するという場合には、婚姻費用をもらいながら別居するのも良い方法です。距離が離れると、お互いに相手の良い面に気付き、夫婦関係の修復につながる可能性もあります。
ただし、婚姻関係を解消させるつもりがない場合は、定期的に会ったり連絡を取り合ったりして、最低限の夫婦関係を維持していくことも必要となります。
別居のひとつの形として、「家庭内別居」という暮らし方もあります。
家庭内別居とは、一般的に夫婦関係が破たんしているものの、何らかの理由で離婚せず一つ屋根の下で同居を続けている夫婦のことをいいます。
お互いに共同生活を継続し、毎日のように顔を合わせるわけですから、どの家事をどちらが行うのか、子どもとの接し方はどうするのかなどについて、細かくルールを決めておくことが重要です。単に口をきかないというだけでは、ストレスを軽減できる可能性は低いのでご注意ください。
(3)仮面夫婦
仮面夫婦とは、夫婦関係が破たんしているものの、親族や友人、近所の人たちなど第三者の前では円満な夫婦として振る舞う夫婦のことをいいます。
家庭内別居との違いは、第三者の前で円満な夫婦を演じるかどうかの違いです。
仮面夫婦の場合も家庭内別居の場合と同様、共同生活上のルールを細かく決めておかなければ、ストレスの軽減にはあまりつながらない可能性があります。
結局のところ、卒婚・別居(家庭内別居)・仮面夫婦といった暮らし方は、いつまでも継続するものというよりは、相手方と距離を置くことでひとまずストレスを軽減させ、今後の夫婦関係を見直すために試してみることが有効といえるでしょう。
6、専業主婦が離婚を切り出された時の対処法
専業主婦の方の中には、自分は離婚したくないのに相手方から離婚を切り出されてお困りの方もいらっしゃることでしょう。
夫が有責配偶者(自分で離婚原因を作った人)である場合は、あなたが同意しなければ離婚手続きは進められません。強い調子で離婚を迫られたとしても、安易に離婚に応じないようにしましょう。
ただ、夫が有責配偶者であるにもかかわらず離婚を切り出してきた場合は、財産分与や慰謝料などで有利な条件を引き出しやすくなります。自分が希望する条件を提示し、離婚してあげる代わりに応じてほしいと交渉してみましょう。納得できる条件で合意できた場合は、離婚に応じるのも一つの方法です。
もし、あなたが有責配偶者である場合でも、交渉次第では離婚条件を有利にできる可能性があります。財産分与はどちらが有責配偶者であるかとは無関係に請求できますので、遠慮せず請求しましょう。
交渉がまとまらない場合は、婚姻費用をもらって別居の形をとることがおすすめです。
婚姻費用は、離婚が成立するまでもらい続けることが可能です。別居期間が長引くと、相手方は金銭的な負担がかさんでくるので、離婚条件で妥協してくる可能性があります。
7、専業主婦が離婚しても親権を獲得できる?
専業主婦でも、離婚する際に子どもの親権を獲得することは可能です。
どちらが親権者となるかは基本的に夫婦間の話し合いによって決めますが、話し合いがまとまらない場合は調停や裁判で決めることになります。その場合、「現状維持の原則」と「母性優先の原則」が重視されますので、むしろ専業主婦は有利となります。
専業主婦であれば、今まで主に子どもの世話をしてきたのはあなたでしょう。その現状をできる限り維持すべきであると考えられますので、親権を獲得できる可能性は高いといえます。
ただし、離婚後に自立して生活できる見込みがないような場合には、夫が親権者に指定される可能性もあります。
離婚後の生活に不安がある場合には、利用できる助成金制度を調べるとともに、離婚後の仕事についても早めに探しておくようにしましょう。
8、専業主婦が離婚する場合にやっておくべき準備は7つ
以上、専業主婦の方が離婚する際に知っておいていただきたいことを解説してきました。
ここで、離婚前にやっておくべき準備事項の形にまとめておきますので、順にご確認ください。
(1)生活費の試算
まずは、離婚して1人になるとどれくらいの生活費が必要となるのかを試算しましょう。
前記「3」で平均的と思われる金額をご紹介しましたが、お住まいの地域の家賃や物価の相場、生活の実情などに応じて、ご自身なりに細かく試算してみることをおすすめします。
(2)もらえる助成金の試算
助成金についても前記「3」で目安をご紹介しましたが、シングルマザーに対する支援の内容や金額は自治体によって異なります。一度、お住まいの自治体のホームページなどで詳細をご確認の上、ご自身のケースでいくらもらえるのかを試算してみましょう。
(3)財産分与や慰謝料の請求額を決める
財産分与としていくらもらえるかは、夫婦共有財産がいくらあるかによります。したがって、夫婦共有財産として何がいくらあるかを把握しておくことが重要となります。
相手方の預貯金や財形貯蓄、株式等の有価証券なども夫婦共有財産となりますが、離婚を切り出す前にいくらあるのかを確認することは難しいものです。もし、それとなく相手方から聞けるようであれば聞いておきましょう。その他、不動産や車、保険、貴金属、骨董品等々、財産的価値があるものをピックアップしておくとよいでしょう。
慰謝料としていくらもらえるかは、相手方にどのような有責性があるかによります。例えば、相手方が不倫をした場合なら100万~300万円程度が相場ですが、不倫の内容や程度によっても異なってきます。
また、慰謝料を請求するためには証拠を確保しておくことも大切です。財産分与や慰謝料の請求額を適切に決めるためには、専門的な法律の知識が必要となりますので、弁護士に相談してみることをおすすめします。
おおよその金額とともに、証拠の集め方についてもアドバイスが得られます。
(4)親権を獲得できそうか確認する
先ほどもご説明したとおり、専業主婦は親権を獲得できる可能性が高いですが、確実というわけではありません。離婚後の生活の見通しや、その他にもあなたが子育てを放棄していた、家事をしなかった、ギャンブルで浪費する癖がある……等々、何らかのマイナス要素があるかもしれません。
その場合には、離婚を切り出す前に対処して、親権を獲得できる可能性を高めておく必要があります。
(5)養育費としてもらえる金額の確認
養育費の金額は、基本的に裁判所の養育費算定表を参照して決められますので、前記「3」(1)に掲げたリンクをクリックして養育費算定表を開き、確認しておきましょう。
もっとも、養育費算定表の金額はあくまでも目安であり、相手方との交渉などによって高額の養育費を獲得できる可能性もあります。
そのためには、子どもにどのような習い事をさせ、どのような学校に進学させたいのかなどを具体的に想定した上で、何にいくらの金額がかかるのかを細かく試算しておくことが重要となります。
(6)必要に応じて別居する
離婚する前に別居することが必要なわけではありませんが、夫との共同生活に耐えられない場合や、頭を冷やしたい場合などは、いったん別居するとよいでしょう。
別居する際には、婚姻費用を忘れずに請求しましょう。婚姻費用は請求したときからしかもらえませんので、別居開始前に話し合って金額や支払い方法を取り決めておくことをおすすめします。
(7)離婚後の仕事の目星を付けておく
離婚後の仕事は、離婚後に探しても構いません。
しかし、相手方にめぼしい財産がなく、財産分与や慰謝料をあまりもらえないような場合は、早めに仕事をしておいた方がよいでしょう。
離婚後は積極的に働きたいという場合も、早めに動いた方がよいようです。離婚後に初めて仕事を探したところ、思いのほか採用状況が厳しいということもよくあるからです。
無理をする必要はありませんが、離婚後の生活をできる限りスムーズに開始できるように、準備を進めるに越したことはありません。
専業主婦の離婚に関するQ&A
Q1.専業主婦の離婚後の生活費はどれくらい?(1ヶ月)
- 子供がいない場合:15万500円
- 子供1人(7歳)の場合:18万5300円
- 子供2人(10歳、7歳)の場合:21万9000円
Q2.専業主婦が離婚しても親権を獲得できる?
専業主婦でも、離婚する際に子どもの親権を獲得することは可能です。
どちらが親権者となるかは基本的に夫婦間の話し合いによって決めますが、話し合いがまとまらない場合は調停や裁判で決めることになります。その場合、「現状維持の原則」と「母性優先の原則」が重視されますので、むしろ専業主婦は有利となります。
Q3.専業主婦が離婚する場合にやっておくべき準備は?
- 生活費の試算
- もらえる助成金の試算
- 財産分与や慰謝料の請求額を決める
- 親権を獲得できそうか確認する
- 養育費としてもらえる金額の確認
- 必要に応じて別居する
- 離婚後の仕事の目星を付けておく
専業主婦の離婚まとめ
専業主婦が離婚する場合、相手方からもらえるお金をしっかり確保し、シングル助成金もフルに受給すれば、働かずに生活していくことも不可能ではありません。
ただ、相手方が気前よくお金を支払ってくれるとは限りません。
離婚を切り出す前に準備できることはしっかりと準備しておくことが大切です。お困りの時はひとりで悩まず、弁護士に相談してみることをおすすめします。