離婚を考える方の中には、「何をどのような順番でやればいいのかわからない」と悩んでいる方もいるかもしれません。
今回は「離婚やることリスト」についてご紹介します。
目次
1、離婚前やることリスト〜子なし編
まずは、離婚前にやるべきことをご説明します。ここでは子どもがいない方向けのリストをご紹介しますが、以下のリストは子どもがいる方にも共通するものです。
子どもがいる方の場合は、さらにやるべきことがありますが、その点は次項「2」でご紹介します。したがって、子どもがいる方も本項から順にお読みくださいますようお願いいたします。
(1)(相手方に離婚原因がある場合)証拠集め
浮気やDV・モラハラなど、相手方に離婚原因がある場合は、まずその証拠を確保しておくことが重要です。
証拠がなければ、相手方に事実を否定されてしまえば離婚の話し合いを進めることができませんし、慰謝料の請求もできなくなるからです。
特に、離婚裁判まで進んだ場合は証拠がなければあなたの主張を認めてもらうことはできません。
したがって、離婚の決意が固まっているのであれば、離婚を切り出す前に証拠を確保しておいた方がよいでしょう。
どのような証拠を集めればよいのかや、証拠の集め方については、以下の記事をご参照ください。
(2)共有財産のチェック
次に、夫婦共有財産として何があるかをチェックしましょう。
離婚するときには、財産分与として夫婦共有財産の分割を請求できます。基本的に専業主婦か兼業主婦かにはかかわらず、夫婦共有財産の2分の1を取得できるのが原則です。
ただ、離婚を切り出すと相手方が財産を隠す可能性があり、その場合は財産を2分の1ずつに分けてもあなたが損することになってしまいます。
そのため、やはり離婚を切り出す前に相手方の財産をしっかりと確認した方がよいでしょう。
詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。
(3)(現在相手の扶養下にある場合)離婚後の仕事決め
現在相手の収入に頼って生活している方の場合、離婚後は経済的に自立しなければなりません。専業主婦の方なら、仕事に就く必要があるでしょう。
働き始めても1ヶ月分の給料がもらえるようになるまでに2ヶ月ほどかかることもありますので、できる限り離婚前から仕事を始めておいた方がよいでしょう。
(4)離婚後の住まい決め
離婚後に住むところも早めに決めておきましょう。
多くの場合、離婚後には妻が家から出ることになるケースが多いかと思います。実家に戻るのか、アパートなどを借りるのかをまず検討し、新たに借りる場合は早めに契約しておくことです。離婚協議が長引く場合には、そこへ引っ越すことで別居を始めることもできます。
(5)必要に応じて別居
離婚前に別居しなければならないわけではありませんが、別居することでスムーズに離婚しやすくなる場合もあります。
特に、浮気やDVといった特段の離婚原因もなく、「性格の不一致」などで離婚したい場合には、別居することで夫婦関係の解消につながりやすくなります。
DVやモラハラなどで心身に危険が及んでいる場合は、早めに別居して、落ち着いた状態で離婚の準備を進めた方がよいでしょう。
(6)離婚後の姓をどうするか検討
結婚したときに相手方の姓に変えた方は、離婚後に旧姓に戻るか、婚姻中の姓のままにするかを選ぶことができます。
特に手続をしなければ、旧姓に戻ることになります。婚姻中の姓を名乗り続けるためには、離婚後3ヶ月以内に役所で手続きをする必要があります。
どちらにするかは離婚後に考えても間に合いますが、旧姓に戻ると様々なものの名義変更が必要となりますので、早めに決めておくことをおすすめします。
(7)離婚協議
以上の準備が整ったら、相手方と離婚についての話し合いを行います。この話し合いのことを「離婚協議」といいます。
離婚条件については、特段の離婚原因がない場合は財産分与についての話し合いがメインになります。
基本的には前述したように夫婦共有財産を2分の1ずつに分けますが、状況によっては「慰謝料的財産分与」や「扶養的財産分与」として妻が多めの財産を取得できる場合もあります。
お互いが合意すれば自由に取り決めることができるので、離婚後の生活費などを試算した上で希望の金額を相手方に伝えてみるとよいでしょう。
相手方が会社員などで厚生年金に加入している場合は、年金分割も請求できます。分割割合は、原則として0.5です。
どちらかに離婚原因がある場合は、慰謝料についても取り決めるのが一般的です。金額や支払い方法(一括払いか分割払いかなど)はお互いが合意すれば自由に決められますので、十分に話し合って柔軟に取り決めるとよいでしょう。
話し合いがまとまったら、離婚協議書を作成し、合意した内容を記載しておきましょう。公正証書にしておけば、万が一相手方が合意した金銭を支払わない場合に裁判なしで財産を差し押さえることが可能になります。したがって、できる限り公正証書にしておくことをおすすめします。
詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。
(8)離婚時期の決定
すぐに離婚する場合は特に問題ありませんが、離婚までにある程度の期間を置く場合は、いつ離婚するのかも明確に決めておきましょう。
例えば、「妻の就職が決まったとき」「夫が定年退職したとき」などと離婚の時期をあらかじめ決めておくケースがあります。
他にも、子どもの卒業・就職や結婚などが近い時期に予定されているときは、その後に離婚すると取り決めるとよいでしょう。
離婚の時期を取り決めた場合は、離婚協議書にも明記しておくべきです。
また、別居している場合はその間の生活費を「婚姻費用」として相手方に請求できます。
(9)離婚届の記入、提出
最後に、離婚届に記入して役所へ提出します。協議離婚の場合は、夫婦の双方が署名・押印し、成人の証人2名の署名・押印も必要です。
提出先は夫婦の本籍地の市区町村の役所、または夫婦どちらか一方の所在地の市区町村の役所です。本籍地以外の役所へ提出する場合は戸籍謄本を添付する必要があります。提出は郵送でもかまいませんので、苦労することはありません。
ただ、離婚するまでに期間が空く場合は、どちらが離婚届を提出するかも取り決めておき、離婚協議書に記載しておいた方がよいでしょう。
2、離婚前やることリスト〜子あり編
次に、子どものいる方が離婚前にやることのリストをご紹介します。子どもがいる方の場合は、前項のリストに加えて以下のことを離婚協議前にやるようにしましょう。
(1)親権について調べる
離婚するときには、未成年の子どもの親権者を父母のどちらか一方に決めなければなりません。
多くのケースでは母親が親権者となっているのが実情ですが、どちらが親権者となるかは子どもの幸せを第一に考えて決めるべきことです。
したがって、必ずしも母親が親権者になれるわけではありませんし、父親が親権者になれないわけでもありません。
親権者になりたい場合は、ご自身のケースで親権者になれる可能性がどの程度あるのかを調べておきましょう。親権者になれる可能性が高くない場合は、どうすれば可能性を高めることができるのかも調べておくべきです。
また、親権は子どもと一緒に暮らす権利だけではなく、子どもの養育のために様々な義務を伴うものであることも知っておきましょう。
詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。
(2)養育費の相場を調べる
親権者となった側は、(元)パートナーに対して養育費を請求できます。養育費の金額は、話し合いでお互いが合意すれば自由に決められます。
あなたが親権者となった場合は、実際に子どもの養育にかかる費用を試算した上で適正な金額をしっかりと請求しましょう。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での離婚調停や離婚裁判でも使用されている「養育費算定表」を参考にして決められることが一般的なので、これが相場となります。
養育費算定表では、子どもの年齢や人数、両親それぞれの年収に応じて養育費の相場が定められています。
下記のリンクからご参照いただき、あなたのケースでどのくらいの養育費がもらえるのか調べておきましょう。
養育費算定表はこちら
(3)面会交流について考えておく
親権を獲得できなかった側(非親権者)には、子どもと定期的に会って交流を図る(このことを「面会交流」といいます。)権利があります。
離婚後は元パートナーに子どもを会わせたくないという方もいらっしゃるかもしれませんが、面会交流は子どもの成長のために大切なものです。
元パートナーが子どもを虐待するおそれがあったり、子どもが面会を嫌がっている場合を除いて、適切な頻度で面会交流を実施した方がよいでしょう。
面会交流の頻度や方法も離婚する時点で具体的に取り決めておき、離婚協議書に記載しておくべきです。そうしなければ、元パートナーが連日のように子どもに会いに来ても拒みにくくなり、トラブルとなるおそれがあります。
一般的には月に1~2回、それぞれ半日程度の面会交流を行うのが相場的です。
(4)離婚後の学校(保育所、幼稚園)について検討
離婚後のあなたの転居先によっては、子どもの転校が必要となる場合もあります。転居先の近くに学校や保育所、幼稚園があるかも調べておきましょう。
もし、通いやすい場所に学校などがない場合は、転居先を再検討する必要があるかもしれません。
(5)子どもの姓をどうするか検討
あなたが離婚後に旧姓に戻る場合は、子どもの姓をどうするかも検討すべきです。何も手続をしなければ、子どもは父親の戸籍のままで、父親の姓を名乗り続けることになります。
子どもがあなたと同じ姓を名乗るためには、家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を申し立てて、許可を得る必要があります。その上であなたが新しい戸籍を作り、そこに子どもを入れることも必要です。
子どもが小さい場合は、以上の手続きを経て母親と同じ姓を名乗るケースが多いですが、物心がつく年齢になると、慣れ親しんだ姓を変更させることは子どもにとって精神的負担となります。
そのため、子どもの姓をどうするかは子どもに与える影響をよく考えて決める必要があります。
子どもがある程度の年齢の場合でも転校させる場合には、それを機に姓を変えることにも比較的抵抗は少ないといえます。
(6)離婚後に受けられる社会保障制度を調べる
離婚して子どもを育てていくためには、元パートナーからもらう養育費だけでは生活費が十分でない可能性があります。
ひとり親家庭の場合は、児童手当や児童養育手当をはじめとして、様々な公的手当や優遇措置を受けることができます。
ご自身が申請できる制度にはどのようなものがあるのか、それによってどのくらいのお金がもらえるのかもあらかじめ調べておきましょう。
詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご参照ください。
3、離婚後やることリスト〜子なし編
離婚が成立した後も、新しい生活を始めるためにやるべきことがいろいろとあります。
ここでも、まず子どもがいない方向けの「離婚をやることリスト」をご紹介し、次項で子どもがいる方向けのリストもご紹介します。
(1)住民票を異動する
離婚後に転居する場合は、住民票の異動が必要です。
いま住んでいる市区町村とは別のところへ転居する場合は、転居前の市区町村の役所に「転出届」を提出した上で、転居先の市区町村の役所に「転入届」を提出します。
いまと同じ市区町村内で転居する場合は、そこの役所へ「転居届」を提出するだけで足ります。
なお、「戸籍」と「住民票」は別のものです。したがって、転居後の住所で新しい戸籍を作った場合も、住民票の異動手続きは別途必要ですので、ご注意ください。
(2)国民健康保険(または勤務先の健康保険)に加入する
婚姻中にパートナーの扶養に入っていた方は、離婚後はご自身で健康保険に加入する必要があります。
離婚後も仕事をしない方や、パートなどで勤務先の健康保険に入れない方は、市区町村の役所で国民健康保険に加入する手続をします。
勤務先の健康保険に加入できる場合は、会社の指示に従って必要書類を提出しましょう。
(3)国民年金(または社会保険)に加入する
国民健康保険に加入する人は、国民年金の手続きも必要です。こちらは市区町村の役所ではなく、年金事務所で手続きを行います。パートナーの扶養から外れたことや、氏名・住所の変更などを届け出ます。
勤務先の健康保険に加入する人は、厚生年金への加入手続きも会社がやってくれますので、会社の指示に従って必要書類を提出しましょう。
(4)印鑑登録を変更する
離婚後に旧姓に戻る方は、印鑑登録も旧姓のものに変更しましょう。
姓が変わらない方も、住所が変わる場合は旧住所での印鑑登録を抹消し、新住所で新たに印鑑登録を行う必要があります。
(5)相手方から取得した財産の名義変更をする
財産分与で不動産や自動車、株式などの有価証券などを取得した場合は、ご自身の名義に変更しましょう。
不動産の名義変更には、登録免許税や司法書士費用がそれなりにかかりますので、それらの費用をどちらが負担するかも離婚協議の際に話し合って取り決めておくべきです。
(6)住所・氏名の変更が必要なものは変更する
以上の他にも、離婚後に住所・氏名の変更手続きが必要なものがいろいろとあります。一般的には、以下のものについて変更手続きが必要となります。
ご自身に該当するものをピックアップした上で、集中的に効率よく手続きをするようにしましょう。
- 運転免許証
- パスポート
- 銀行口座
- クレジットカード
- 携帯電話・スマホ
- 各種任意保険(生命保険、自動車保険、その他)
- 児童手当
- 水道光熱費など公共料金の契約
- その他、継続的に料金が必要となる契約
(7)必要に応じて慰謝料等の請求
慰謝料や財産分与を取り決めた場合、相手方がすぐに一括で支払ってくれれば問題ありませんが、なかなか支払ってくれない場合は早めに請求しましょう。
長期間放置すると時効にかかるおそれもありますので、請求しても支払ってくれないときは弁護士に相談することをおすすめします。
4、離婚後やることリスト〜子あり編
子どもがいる場合は、前項「3」のリストに加えて、以下の手続きも必要になります。
(1)児童手当の受取人を変更する
児童手当はひとり親家庭でなくても受け取れるものなので、子どもがいる方のほとんどは2ヶ月に一度受給しているはずです。
ただし、児童手当は世帯主に支給されるものですので、何も手続をしなければ離婚後も元パートナーが受け取り続けることになります。
あなたが子どもの親権者になった場合は、市区町村の役所で児童手当の受取人を変更する手続きをしましょう。
(2)必要に応じて養育費の請求
元パートナーが養育費をスムーズに支払ってくれればよいのですが、途中で支払わなくなるケースも多くあります。
養育費が途絶えると生活に困ったり、子どもの養育に支障をきたすこともあるでしょうから、適切に請求することが大切です。
養育費について取り決めた離婚協議書を公正証書にしている場合は、すぐに相手方の財産を差し押さえることができます。
そうでない場合は、家庭裁判所へ「養育費請求調停」を申し立てる必要があるかもしれません。その場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
(3)各種社会保障制度を申請する
ひとり親家庭が利用できる様々な社会保障制度がありますので、該当するものは漏れなく申請して生活費の足しにしましょう。
離婚後にシングルマザーとなった多くの方が申請できる制度には、以下のものがあります。
①市区町村の役所に申請する制度
- 児童扶養手当
- 児童育成手当
- ひとり親家庭の住宅手当
- ひとり親家族の医療費助成制度
他にも条件次第で申請できる可能性がありますので、役所の窓口で尋ねてみるとよいでしょう。
②年金事務所に申請する制度
国民年金保険料の免除などの制度があります。
③学校(教育委員会)に申請する制度
就学援助などの制度があります。
(4)必要に応じて転校手続き
子どもの転校が必要な場合は、スムーズに通学できるように、早めに転校手続きを済ませておきましょう。
5、リストをスムーズにこなせないときは弁護士へ無料相談を
ここまで、「離婚やることリスト」をご紹介してきましたが、簡単にこなせる項目ばかりではないかもしれません。特に、離婚前のリストにおいては、なかなかスムーズにリストをこなせないこともあるでしょう。
証拠集めがうまくいかない、離婚協議が進まない、養育費の話し合いがまとまらないなど、実際に進めてみると様々な悩みも出てくるかと思います。
そんなときは弁護士に相談し、有益なアドバイスをゲットしましょう。まずは無料相談を気軽に利用してみるとよいでしょう。
離婚やることリストに関するQ&A
Q1.離婚前やることリストとは?~子なし編
- (相手方に離婚原因がある場合)証拠集め
- 共有財産のチェック
- (現在相手の扶養下にある場合)離婚後の仕事決め
- 離婚後の住まい決め
- 必要に応じて別居
- 離婚後の姓をどうするか検討
- 離婚協議
- 離婚時期の決定
- 離婚届の記入、提出
Q2.離婚前やることリストとは?〜子あり編
- 親権について調べる
- 養育費の相場を調べる
- 面会交流について考えておく
- 離婚後の学校(保育所、幼稚園)について検討
- 子どもの姓をどうするか検討
- 離婚後に受けられる社会保障制度を調べる
Q3.離婚後やることリストとは?〜子なし編
- 住民票を異動する
- 国民健康保険(または勤務先の健康保険)に加入する
- 国民年金(または社会保険)に加入する
- 印鑑登録を変更する
- 相手方から取得した財産の名義変更をする
- 住所・氏名の変更が必要なものは変更する
- 必要に応じて慰謝料等の請求
まとめ
離婚はスムーズにできる場合でも、やることがたくさんありますし、精神的な負担も軽いものではありません。
それだけに、「離婚やることリスト」を用意して効率的に進めていくことが大切です。
あなたなりのリストを作ってみて、それでも不安があるときは弁護士に相談してみましょう。
弁護士という味方を得ることによって、離婚をスムーズに進めることも可能になりますし、精神的な負担も軽減されることでしょう。