自分自身がDV(ドメスティックバイオレンス)の被害者であるのか、不安に感じたことはありませんか?
今回は、
- DVとは何か
- DVの原因と加害者の特徴
- DVの相談先
について解説します。
1、DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
(1)DVとは
ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)に明確な定義はありませんが、日本では「配偶者や恋人などの親密な関係にある、または過去その関係にあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されています。
「暴力」というと、殴る、蹴るといった“身体的なもの”を思い浮かべる方も多いでしょう。
実は、言葉による精神的・心理的暴力やお金を渡さないなどの経済的暴力、家庭外の人間関係を遮断させる社会的隔離などもDVに含まれ、身体的暴力にとどまらないという特徴があります。
あなたが受けているその言動はDVなのか。
DVの詳しい意味についてはこちらの記事をご確認ください。
(2)DVの種類は6種類
DVには身体的暴力を含めた6つの種類があります。
①身体的暴力
殴る、蹴る、首を絞める、タバコの火を押し付けるなど、肉体に直接的に振るわれ、傷が残るような暴力が身体的暴力です。
被害者の身体に傷やアザが残るため、比較的発見されやすいDVですが、服で隠れる部分を殴ったり、跡が残らない程度に留めたりするなど、第三者が気づきにくいケースもあります。
②精神的・心理的暴力
嫌がらせ、暴言、中傷、無視、脅迫など、主に言葉によって精神的な苦痛を負わせる暴力が精神的(心理的)暴力です。
中には、PTSDを患う人もいるようです。
身体的暴力と違って証拠が残りにくく、音声や動画で証拠を残しておかないと調停や裁判などで立証しづらいという特徴があります。
③性的暴力
望まない性行為や妊娠、ポルノ映像など見たくないものを強要するなどの行為が性的暴力です。
他には、子供が授からないことを妻のせいにする、自分の浮気を配偶者に無理矢理認めせることも性的暴力に該当します。
性に関することゆえに、他人に相談しにくく、第三者が踏み込みにくい、対処が遅れがちという特徴があります。
④経済的暴力
生活費を渡さない、勝手に妻(夫)の貯金を使う、妻(夫)名義で借金を作るなどの行為が経済的暴力です。
夫婦のうち収入の高い方が加害者になりやすく、お金をコントロールすることで夫婦間や家庭内に上下関係を生み出し、相手よりも優位な立場になろうとする傾向があります。
⑤社会的隔離
親族や友人と会わせない 、外出を禁止する、携帯電話のメールや着信履歴を執拗にチェックするなど、自分以外の外部の人間との交流を絶たせようとする行為が社会的隔離です。
⑥子どもを使った暴力
子どもに相手を攻撃させたり、子どもの前で相手を非難、中傷したりするなど、息子や娘を利用した間接的な嫌がらせもDVに該当します。
被害者にとっても、また利用された子どもにとっても、心に深い傷を残し、後々までトラウマとなってしまうというリスクが考えられます。 DVの種類の詳しい解説は、こちらの記事もご覧ください。
(3)どこからがDV?DVの基準とは
嫌な思いはしている、でもこれくらいみんな我慢してることではー。
そんなとき気になるのがDVの「基準」です。
こうされたらDVです、とはっきり明示してくれていればどんなに助かることでしょう。
しかし結論から言うと、DVに明確な基準はなく、被害者自身が判断するしか無いと言わざるを得ません。
もっとも、DVと認められる行為がどこからかという指標はあります。
こちらの記事をご覧ください。
もう一つ大切な指標があります。
相手との「関係性」です。
相手がどんなことをすればDVなのか、ではなく、相手とどのような関係にあるか、を考えてみてください。
暴力をやめて欲しいと言える関係性か、言えばやめてもらえる関係性か。
そんなこと口が裂けても言えない(言えば暴力される)、という場合は間違いなくDVの関係にあると言えるでしょう。
(4)DVチェックリストを使ってDVかどうかを判断
DVかどうかの判断に指標が欲しい場合、「DVチェックリスト」があります。
DVチェックリストとは、配偶者からの行為がDVに該当するかどうかを客観的にリスト化したものです。
たとえば、身体的暴力チェックには「平手で打たれたり足で蹴られたりして、体にアザを作ったことがある」「首を絞められたことがある」などの項目が列挙されています。
DVチェックリストの詳細はこちらの記事もご確認ください。
(5)DVのおそろしさ
赤の他人から暴力を振るわれた場合、基本的には警察へ届け、加害者に刑事的制裁を受けてもらうことに積極的であるはずです。
しかし、ドメスティック、つまり家庭内における暴力については、この基本形が崩れます。
相手が自分の生活の、人生の「基盤」であるからです。
加害者が自分の生活の基盤であるがゆえ逆らえず、また、理由のない罵りに対してすら自責の念さえこみあげます。
これが他人からの「暴力」と比べた時の、ドメスティックな暴力特有の恐ろしいところです。
どの家庭でも、夫婦という他人同士で暮らす以上、何もかも思うようにいく関係などほとんどないでしょう。
しかし、ある程度「居心地が良い」と感じられる関係でなければ、「基盤」が崩れてしまいます。
「これくらい誰でも我慢してるのでは。」
もしそう思うのであれば、知人、友人、カウンセリングなど、信頼できる人に確認してみてください。
2、DVの主な原因
夫婦間、恋人感など親密な関係にある二人の間でDVが起こりやすいのは、相手を自分の思い通りにコントロールしたいという願望が原因の1つと考えられます。
DVは被害者の多くが女性で、男性が加害者になりやすいという特徴があり、加害者の男性は自分の思い通りに女性をコントロールしたい、支配下に置きたいという願望を満たすために暴力を振るったり、精神的に追い詰めたりします。
被害者の女性は恐怖感や無力感で心身ともに衰弱してしまい、加害者に従わざるを得なくなってしまうのです。
DVの他の原因についてはこちらの記事にもまとめています。
3、DVをする人の特徴
DVをする加害者男性には次のような特徴があります。
- 独占欲が強く嫉妬深い
- 男尊女卑の考えが強い
- 自分に自信がなく自己肯定感が低い
さらに、夫婦間のDVは当事者たちに暴力という意識が薄い、第三者から発見されにくいという特徴があります。
夫婦間のDVの特徴について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考になさってください。
4、DVは5つの法定離婚事由の1つ
DVは民法770条1項5号に定められた「婚姻を継続し難い重大な事由」の一つに挙げられます。
(1)法定離婚事由とは
民法770条1項では、次に挙げる一定の事由がある場合には、裁判によって離婚できると定めています。
この事由を法定離婚事由と言います。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
参考:民法
(2)「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とは
DVや暴力は民法770条の法定離婚事由に規定されていませんが、実際の裁判では5つ目の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまるとして、訴訟を提起できる可能性があります。
ただし、「何度も平手で殴られた」「屈辱的なことを繰り返し言われた」と訴えるだけで証拠がなければ棄却されてしまうため、裁判に訴える際は診断書や傷の写真等の証拠を必ず準備しておきましょう。
5、DVの相談先
内閣府の調査によると、夫からDVを受けている女性の4割近くが「相談するほどのことではない」「自分にも非がある」として、約4割がだれにも相談せずにいます。
DVはエスカレートすることがほとんどで、「我慢すればいつかは収まる」ということはありません。
「この人とでないと生きていけない」
「(子どものためなどで)今の生活を変えるようなことはできないのでおおごとにできない」
そうであれば、その夫ともっと平和に生きていける道を、その夫と今の生活のまま平和に生きていける道を考えましょう。
しかし、まずはだれかに相談してください。
DVの相談先には次のような窓口が利用できます。
- 各都道府県警察の犯罪被害相談窓口
- 東京都女性相談センター
- 配偶者暴力相談支援センター
- 女性の人権ホットライン
- 弁護士事務所
DVの相談先について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
6、DV離婚の相談は弁護士へ
配偶者によるDVの生活からおさらばするもっとも基本的な方法は「離婚」です。
ニュースにあるような、殺したり殺されたり、しかも子どもの命を巻き込むものであってはなりません。
もし離婚に踏み切りたい気持ちがあるのであれば、男女問題に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士は、以下の点であなたを不利な状態にすることなく、きちんと離婚を成立させるよう尽力することでしょう。
(1)身体安全の確保
DVの被害者が真っ先にすべきことは、自分や子どもの身体安全の確保です。
配偶者からの暴力の防止・被害者の保護を目的とするDV防止法では、暴力をふるわれた被害者が、配偶者と会わないようにするために「保護命令」の申立ができます。
DVの相談を受けた弁護士はただちに裁判所に対して保護命令を申し立て、被害者の身の安全を確保します。
(2)慰謝料・財産分与請求
DVを理由とした離婚を望む被害者は、暴力を振るう加害者への恐怖心から、慰謝料や財産分与について諦めてしまうことが少なくありません。
しかし、慰謝料や財産分与は収入に関係なく相手方に請求できる正当な権利です。
弁護士は被害者に代わって加害者や加害者側の弁護士と交渉します。
(3)子供の親権確保
夫婦間に子どもがいる場合は、どちらが子どもを引き取るかの親権についても交渉する必要があります。
弁護士は子供の親権確保について、相談者のほうが親権者としてふさわしいことを代弁する役割を担います。
一般的に離婚後の親権は「子供の世話をメインでしている方」が確保するケースが多く、また加害者の暴力が子どもにも影響を及ぼしている場合は、相談者のほうが親権を取得する可能性が極めて高くなります。
(4)子供の養育費請求
慰謝料と同じく子供の養育費も離婚時に請求する金銭ですが、慰謝料が被害者の精神的苦痛に対して支払われるのに対し、養育費は子供を育てるための費用として支払われます。
養育費がいつまで支払われるかは、夫婦間の話し合いで決定します。
弁護士は被害者に代わり、養育費についての交渉を行います。
養育費は子を持つ親の義務であり、収入がない、子供が再婚相手と養子縁組をした、子供が成人をしたなどの特殊なケース以外は、基本的に支払いが免除されるようなことはありません。
しかし、相手方の経済力によって養育費の額や支払いの履行に影響を及ぼす可能性はあります。
DVに関するQ&A
Q1.DVの定義は?
ドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)に明確な定義はありませんが、日本では「配偶者や恋人などの親密な関係にある、または過去その関係にあった者から振るわれる暴力」という意味で使用されています。
「暴力」というと、殴る、蹴るといった“身体的なもの”を思い浮かべる方も多いでしょう。
Q2.DVにはどんな種類がある?
DVには身体的暴力を含めた6つの種類があります。
- 身体的暴力
- 精神的・心理的暴力
- 性的暴力
- 経済的暴力
- 社会的隔離
- 子どもを使った暴力
Q3.DVをする人の特徴は?
DVをする加害者男性には次のような特徴があります。
- 独占欲が強く嫉妬深い
- 男尊女卑の考えが強い
- 自分に自信がなく自己肯定感が低い
さらに、夫婦間のDVは当事者たちに暴力という意識が薄い、第三者から発見されにくいという特徴があります。
まとめ
DVは、一度始まったらだんだんとエスカレートしていくものです。
暴力を振るう配偶者との生活に悩んだときは、迷わず専門家に相談し、自分や子どもの身の安全を確保することを最優先しましょう。
これ以上耐えられない、改善の余地がないという場合は、離婚も選択肢の1つです。
弁護士に相談すれば、親権確保や慰謝料・養育費について、被害者が有利になるよう調停や裁判を進めてくれます。
無料の相談窓口を開いている弁護士事務所もありますので、一人で悩まずに早めにご相談されてみてはいかがでしょうか。