「相続法」
よく耳にすると思いますが、「相続法」という法律はありません。相続法とは、相続に関連する法律の総称です。
その中でも、民法の相続の規定を「相続法」と呼ぶことが多いです。
今回は、
- 相続法の中心になる民法の規定の概観
- 相続関連の民法の重要な条文
- 近時の法改正
についてご説明します。
この記事があなたのお役に立つことができましたら幸いです。
相続に関して詳しく知りたい方は以下のリンクからご覧ください。
1、「相続法」という法律はない!
先ほども述べましたが、
「相続法」という名前の法律はありません。民法の相続関係の規定を相続法と呼んだり、相続に関連する様々な法律も一体として相続法と呼んでいます。
相続については、民法のほか、相続税法、家事事件手続法、戸籍法その他様々な法律が関係しますが、中心となるのが民法です。民法の第5編が相続についての規定になっています。
2、いわゆる「相続法」とは?
ここでは、民法第5編相続について全体像をお示しします。
全体は10章、第882条から第1050条まで約170条ほどで、主な内容は以下にお示しするとおりです。
相続を経験されたことのある方は、ご存じの言葉も含まれるのではないでしょうか。重要な条文については、後ほど解説いたします。
章 | 条文 | 主な内容 |
882から885条 | 相続の開始、相続権についての総則 | |
886から895条 | 法定相続人についての定め 相続の欠格・廃除の定め | |
第3章相続の効力 | 896から914条 | 相続は包括承継、共同相続であるという原則 法定相続分の定め 遺産分割についての定め |
第4章相続の承認及び放棄 | 915から940条 | 相続の承認、放棄、限定承認等の定め |
第5章財産分離 | 941から950条 | 相続財産の分離についての定め |
第6章相続人の不存在 | 951から959条 | 相続人不存在のときの取り扱い |
第7章遺言 | 960から1027条 | 遺言の方式、遺贈の定め 自筆証書遺言、公正証書遺言などの方式・手続き 遺言の効力、遺言の執行、遺言執行者 遺言の撤回、取消しなど |
1028から1041条 | 配偶者居住権、配偶者短期居住権の定め | |
1042から1049条 | 遺留分の帰属とその割合 遺留分侵害額請求など | |
1050条 | 特別寄与者、特別寄与料の定め |
3、今般の相続法改正内容
相続法は2018年に約40年ぶりに改正され、2019年1月以降段階的に施行されています。概要は次の通りです(カッコ内は施行日及び民法の該当条文です)。
改正内容を把握しておけば、相続法制のこれまでの問題も把握できます。
次項で相続法制の基本条文と基本原則を確認しますが、改正点を掴むことが基本原則確認のための早道ともいえます。
(相続法改正の詳細は次を参照ください。)
法務省:相続に関するルールが大きく変わります(リーフレット)
(1)配偶者を守るための改正
①配偶者居住権・配偶者短期居住権の新設(2020年4月1日:1028条、1037条)
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住している場合に、遺産分割や遺贈、死因贈与で配偶者居住権を取得すれば、建物の所有権を取得しなくても、終身無償でそこに居住できます。
居住権は、所有権よりもその評価が低額となるため、配偶者は、その他の相続財産も取得できることが多くなり、住む場所も生活費も確保できる可能性が高くなりました。
遺産分割等で長期の配偶者居住権を取得できなかった場合も、持ち家に居住していた配偶者は「配偶者短期居住権」で、遺産分割の終了か相続開始から6ヶ月間のどちらか遅い方まで無償で居住できます。
②夫婦間の持ち家の贈与に関する優遇措置(2019年7月1日:903条4項)
婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用建物・敷地を生前贈与・遺贈を受けた場合、遺産の先渡しと扱う必要がなくなりました。これにより、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
(2)遺産分割前の預貯金払戻制度(2019年7月1日:909条の2)
各相続人が、遺産分割前でも一定範囲で預貯金の払戻しを受けることができます。生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などに充てることができます。
(3)相続財産使い込みへの対処(2019年7月1日:906条の2)
遺産分割前に一部の相続人が遺産を使い込んでしまった場合に、使い込んだ人以外の相続人の同意で、使い込まれた財産も遺産として存在するとみなして遺産分割できるようになりました。
(4)遺言制度の合理化
①自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日:968条)
自筆証書遺言のうち財産目録は、手書きでなく、パソコンなどでも作成できるようになりました。
②法務局における自筆証書遺言書の保管制度(2020年7月10日:法務局における遺言書の保管等に関する法律)
自筆証書による遺言書を法務局で保管してもらえる制度が創設されました。遺言の紛失、破棄、隠匿、改ざんといった恐れがなくなります。
(5)遺留分制度の見直し(2019年7月1日:1046条)
遺留分を侵害された相続人が、遺贈や贈与を受けた人(遺留分を侵害している人)に対し,遺留分侵害額に相当する「金銭の請求」ができるようになりました(「遺留分侵害額請求権」)。この方法で、端的に金銭的解決を図ることができます。
(6)特別の寄与の制度の創設(2019年7月1日:1050条)
今回の改正で、長男の妻など相続人でない親族でも、被相続人の介護や看護など特別の寄与をした場合には、その程度に応じて相続人に金銭の支払いを請求できるようになりました。
(7)相続登記に関する改正(2019年7月1日;899条の2)
遺産分割や遺言で不動産を取得した場合は、相続登記をしておかないと法定相続分を超える部分は第三者に対抗できないことになり、登記を信頼した第三者が一定の範囲で保護されるようになりました。
相続登記がなかなか行われず、不動産取引に支障が生じていたことを解消しようとするものです。
4、相続法で絶対に知っておくべき条文とは
相続法は全体で約170条にも及ぶ膨大なものです。
本項では、通常の相続の場合にこれだけは知っておくべき基本条文と、その趣旨を簡単にご説明します。
(1)相続の本質(包括承継・共同相続)
(相続開始の原因)
第八百八十二条 相続は、死亡によって開始する。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
(共同相続の効力)
第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
相続は、被相続人の死亡により開始します。
その瞬間に、被相続人の一切の権利義務が相続人に承継されます(「包括承継」)。借金などマイナスの財産、様々な義務も含めてすべて相続人に引き継がれます(一身専属的な権利義務を除く)。
そして、相続人が複数いれば一つ一つの相続財産が共有となります。その管理や処分が大変煩雑になります。
前述した「3、今般の相続法改正」では、遺産共有の原則で発生していた問題を解消しようとするものも多く含まれています。
「(1)配偶者を守るための改正」は被相続人と長く同居していた配偶者が生活の場を失うとか、生計の手段を失うことを防ぐため、遺産共有の原則を手直ししたものです。
「(2)遺産分割前の預貯金払戻制度」も、遺産共有の原則を修正し、生活費や葬儀費用の支払,相続債務の弁済など、実際の相続の場ですぐに必要な費用の支払いができるように配慮したものです。
(2)相続人を確定するための定め
相続人を確定する定めは、第2章相続人886から895条までです。
①法定相続人についての原則の定め
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第八百八十七条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
配偶者は、常に第一順位の相続人となります。
配偶者は、被相続人ともっとも近い関係です。相続財産も夫婦が共同して築き上げられた、という考え方に立脚しています。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条 次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
子及びその代襲者等、直系尊属並びに兄弟姉妹の相続権の定めです。
第一順位が子及びその代襲者等(被相続人の孫等)、第二順位が直系尊属、第三順位が兄弟姉妹です。
先順位者がいない場合に初めて後順位者が相続人となる、という基本的なルールです。被相続人と近い関係のある者から相続していくことになっています。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
例えば、夫が亡くなったときに妻が妊娠していれば、相続人は、妻と胎児です。
夫の両親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。出生時期が相続開始よりも少し遅かったというだけでお子さんの権利を侵害してはならない、という考え方です。
②相続の欠格・廃除の定め
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。以下略
被相続人・相続人の殺害、遺言にかかる不正行為、すなわち被相続人の真正な意思による遺言作成を妨害したり、遺言書の偽造・変造・破棄・隠蔽などをしたものなどが相続人となることができないと規定されています。
欠格事由のうち、殺害などは現実にはほとんど起こらないでしょう。
特に問題になるのは、遺言に関する不正行為が相続欠格になっていることです。とりわけ自筆証書遺言について安直な取り扱いをすると、相続欠格になりかねません。
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
推定相続人が被相続人を虐待した場合などは、被相続人の意思で相続人の資格を失わせることができます。第893条では遺言による廃除の定めも設けられています。
なお、欠格・廃除の場合には、当該推定相続人が相続人でなくなるので、前述887条2項により、その子が代襲相続することになります。被相続人は、虐待をした子を廃除できても、何の責任もない孫まで廃除することはできないのです。
(3)相続分を確定するための定め
①原則の定め(法定相続分)
(法定相続分)
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
共同相続分の原則的な定めです。被相続人との関係の深さに基づき、法定相続分が定められています。
②特別の場合の定め(特別受益者・寄与分)
(特別受益者の相続分)
第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。以下略
(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。以下略
具体的相続分を決定する際に、第900条の法定相続分の原則を修正するものです。簡単に言えば次の通りです。
「被相続人から特別の受益を受けた人は、その分は相続分を先に受けたとして扱いなさい」
「被相続人に特別の寄与をした人はその分を配慮してあげなさい。」
このあたりは相続人間で事実関係を確認し合い、お互い協議の上、無用の紛争にならないように注意すべきでしょう。
③遺産分割協議
(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。以下略
相続財産は共同相続人が共有しているものですから、全員の協議で合意すれば遺産分割することができます。協議が不調ならば家庭裁判所の調停や審判を利用することができます。
(4)相続の承認・放棄
①意思決定の期間は知った時から3ヶ月以内
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。以下略
相続人は自己のために相続開始があったと知ってから、3ヶ月以内に「単純承認」「限定承認」「放棄」を決定する必要があります。
被相続人が多額の借金等を抱えて、知らぬ間に自分が借金を抱える事などは防ぐ必要があります。
他の相続人が放棄したため思いがけず自分が相続人になることがあります(例えば、配偶者、子、直系尊属、他の兄弟姉妹が放棄したため、疎遠な兄弟の相続人になってしまう)。
そのようなときも「自分のために相続が開始した」と知ってから3ヶ月以内に意思決定すればよいのです。相続開始そのものから3ヶ月以内ではありません。
②何もしなければ単純承認|相続財産を安直に扱うと単純承認とみなされる
(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
限定承認や相続放棄の手続きを期限内に取らなければ、単純承認をしたものとみなされ、何らの限定なく被相続人の権利義務を承継することになります。
また、相続財産を処分するなど、不注意に取り扱うと単純承認とみなされますので注意しましょう。
②限定承認は共同相続の場合全員一致が必要
(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
(共同相続人の限定承認)
第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
限定承認は、相続により得た財産の限りで債務等を引き受ける事です。共同相続の場合には全相続人が一致しないと限定承認はできません。現実には殆んど利用されていません。
③相続の放棄
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす
被相続人に多額の債務があるなど相続をしたくない場合、家庭裁判所に申述して相続放棄をすることができます。
(5)遺言の方式と効力についての定め
①遺言の方式は法に従うことが必要
(遺言の方式)
第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。
(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
遺言は被相続人の最後の意思(終意)です。遺言執行時には被相続人本人はいません。それだけに、法律で定めた方式をしっかり守ることが必要です。法の方式に従わなければ、遺言は無効です。
遺言は、最新の日付のものが有効です。公正証書遺言を作成しても、その後で自筆証書遺言で違う定めをすることもできます。遺言の内容を撤回することも可能です。
②自筆証書遺言は自書・押印が原則
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(中略)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。以下略
自筆証書遺言は自書・押印が必要です。日付も明記します。〇月吉日等日付が特定できない場合は無効です。
財産目録は前述の通りパソコンなどでも作れることになりました。 ただし、ページごとに署名押印が必要ですので注意しましょう。
③公正証書遺言
公証人役場で作成するものです。実際に作成される際は、公証役場に必要な書類や手続きなどをご確認ください。本稿では詳細は省略します。
④秘密証書遺言
公証役場に封をした遺言書を持参して証人立会いのもと公証してもらうものです。実際にはほとんど利用されていません。
本稿では省略します。
(6)遺留分
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
遺言がある場合も、相続人の遺留分を侵害することはできません。
条文の書きぶりがわかりにくいのですが、遺留分は、配偶者、子、直系尊属にだけ認められた権利ということです。兄弟姉妹には認められません。
相続人が直系尊属(父母。父母がいないときは祖父母)のみの場合には法定相続分の3分の1、その他の場合は法定相続分の2分の1です。
5、相続法における2021年現在の課題
相続法については、さらに改正が検討されていることがあります。
(1)相続登記の義務化
現在は、相続で不動産を取得しても登記義務はありません。そのため、名義変更登記のない土地や建物が多数存在しており、不動産取引に支障が生じますし、空き家の増加などで、治安悪化やゴミ屋敷のような衛生上の問題も現実に発生しています。
このような事態から、法務省の法制審議会で相続登記の義務化が検討されています。
(2)遺産分割協議の期限を10年に
相続人が遺産分割協議を行わずに放置していると、相続登記の問題と同様に不動産取引が円滑に進まなかったり、空き家の増加による治安悪化などの問題があります。
法務省の法制審議会では、遺産分割協議の期限を10年に限る法案も検討されています。
10年を過ぎても遺産分割が行われない場合には、相続人の共有とみなして取引可能とする、という対応が検討されています。
まとめ
相続は誰にでも発生します。しかし、一生に幾度も生ずるものではありません。多くの人にとっては初めての問題なのです。
今回は、相続法の基本を噛み砕いてご説明しましたが、実際の相続にあたっては、適宜専門家のアドバイスを得ないととんでもない落とし穴にはまりかねません。必要なときにはお早めに弁護士に相談をされることをおすすめします。
本記事が、相談のための手がかりとなり、皆様の円滑な相続に少しでもお役に立てれば幸いです。